コーヒーは人生の名脇役

誰にも、人生という壮大な物語があります。
それは、華々しいきらびやかな物語もあれば、一輪の花のような物語もあります。
時に、青空が広がるような爽やかな場面もあれば、激しい嵐のような場面もあります。
私のつつましやかな人生も、やはり人並みの物語を奏でています。

物語には必ず、心に残るワンシーンというものが幾つかあります。
名作映画などで例えると、ローマの休日のスペイン階段でのシーンといったところ。
SF映画のETでは、指を合わせるシーンでしょうか。
私の物語にも、そんな思い出に残るシーンがあるのだろうか?と、振り返ってみました。すると、せん越ながらスターさながらの名シーンが、ポッ、ポッと浮かんできました。
そして驚いたことに、それぞれのシーンに名脇役の存在があることに気がつたのです。
それが、コーヒーです。
コーヒーという脇役さんが、私の物語を素敵に演出してくれていました。
女優になったつもりで、心に残っているシーンを振り返ってみたいと思います。

まずは安堵と喜びが入り混じった、感慨深いワンシーンです。
それは一人上京して、無事住まいも決まりホッと一息ついたワンシーンです。
上京するために色々な準備を数年かけて行ってきた私。
その夢が叶った時の喜びは、寝るのがもったいないほどの感動がありました。
仕事も決まりホッとしたこともあり、高まる気持ちに任せて街に出ました。
昔からコーヒーが大好きな私です。
頑張った自分へのご褒美として、カフェでのコーヒータイムをプレゼントすることにしました。
引っ越しに費用がかかったため、当面は節約生活が否めない状況。
カフェに入ることは、かなりの贅沢でした。
頼んだコーヒーを目の前に、目が潤みました。
自分の希望を叶えることは、こんなにうれしいものなのかと。
初めて自分で人生を切り開いた、上京と言う名シーンです。
カフェの窓からこぼれる、木漏れ日のような淡い光。
コーヒーを一口飲んでホッと一息ついたその瞬間を、今もありありと感じることができます。
言葉には表現しがたい充足感のワンシーンを、コーヒーという脇役が趣を添えてくれています。

コーヒーは、何時の時も心の充足を与えてくれます。
家で飲むときも、特別な場所で飲むときも、安らぎの時間を演出してくれます。
生活に潤いをもたらしてくれる、名脇役なのです。

このコーヒーは、おもてなしをする時も、何故か喜びがあります。
かわいいカフェなどをやってみたいと思う人は、私だけではないでしょう。
ナチュラルな家具に囲まれた小さなカフェで、コーヒーをお出しして会話をかわす・・。
想像するだけで、楽しくなってきます。
実は、コーヒーをおもてなししていた、キラキラ輝いたワンシーンもあるのです。

昔から自然が大好きな私は、どうしても自然の中で暮らしてみたくなり、ワンシーズン、リゾートバイトをしたことがあります。
舞台は高原のホテルです。
輝くばかりの緑に囲まれ、素の私でいられる実感がありました。
細胞すべてが喜んでいるのを感じたものです。
そのホテルには、小さなカフェスペースがありました。
ポコポコと、サイフォンで淹れるコーヒーです。
私は、このカフェの当番になる日を、いつも心待ちにしていました。
サイフォンでコーヒーを落している数分は、カウンター越しに会話をするチャンスです。
「どちらから、いらっしゃったのですか」「今日はどちらに行かれますか」・・
そんな問いかけに、お客様も嬉しそうに言葉を返してくれます。
そしてサイフォンからカップにコーヒーを注ぎ、お客様にお出しする瞬間、何故か「ああ、しあわせ!」と感じたことを思い出します。
自分の好きな空間で、安らぎのひと時を提供できる喜び。
「美味しい!」と、言っていただけた時の喜びも格別なものがあります。
このような場面では、コーヒーが主役になることもあります。
厳選した豆を挽きサイフォンで淹れたコーヒーは、かなりの演技派です。
深い味わいと、苦味が冴える名俳優と言えます。
ほんのひと時を、充足の時間に彩ってくれる演技派なのです。
カップにコーヒーを注ぐ瞬間の、私がきらきら輝いていたワンシーン。
外から差す緑と光、そしてコーヒーの香りまで思い出します。

最後は心に残る、とっておきのコーヒーシーンです。
このシーンは、共感できる人も多い筈です。
コーヒーのCMにも使えそうなシーンです。
それは初めて登山をした時のシーンで、登山の休憩時に皆で飲んだコーヒーです。
お湯を沸かして、仲間がコーヒーを淹れてくれました。
アウトドア専用の用具があり、山の中腹でも美味しいコーヒーがいただけます。
大自然の中、屋外でいただく暖かいコーヒーの味わいは、忘れがたいシーンを作ってくれます。
身体の疲れも癒してくれ、まさにホッとひと息できる瞬間と言えます。
自然に笑顔になれる素敵な時間を、コーヒーが演出してくれました。

こんな風に、私の物語の心に残るシーンには、必ずコーヒーという名脇役さんが登場していました。
皆さんの物語にもそっと登場して、味わい深い演出を、してくれていることでしょう。

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