コーヒーは心の鏡

コーヒーを飲んでいるときはなぜだかいろいろな感情が溢れ出そうになります。コーヒーという飲み物は不思議な飲み物です。あるときは人を元気にしたり、あるときは人を悲しませたり、ただの飲むものなのにただの飲み物だけではないパワーを感じることができます。まるで人の心を映し出す鏡のような飲み物です。

その時その時の気分で人はコーヒーに砂糖を入れたりミルクを入れたり何にも入れないで飲んだりします。コーヒーは気分転換や落ち込んだり悩んだりしている時に頭をすっきりさせる力があります。私は以前はコーヒーが大嫌いで全くと言っていいほど飲みませんでした。苦いし後味も苦いし、とにかく苦いだけで何がいいのか全く理解できませんでした。しかしある人と出会ってから私は毎朝コーヒーを飲むのが習慣になりました。それはちょうど今の季節のような肌寒い時期でした。

 

前から近所にあるコーヒー屋さんが気になっていました。でも私が通る時間帯はいつも閉まっています。営業時間も書いてないしメニューも書いてないし正体不明のコーヒー屋さんでした。しかしコーヒー屋さんというのはわかるようになっていました。なぜならそこのまえをとおるといつもコーヒーのいい匂いがしたからです。コーヒーは嫌いでもコーヒーの匂いはとても好きでした。だからそのお店の前を通ると1日幸せな気分です過ごせそうな爽快感を味わっていました。いつかこのお店が空いている時があったらコーヒーを飲んでみたいと思わせてくれるほど本当にいい匂いがしました。しかしいつになってもやはりお店は開いていません。

 

今日も空いていなかったとがっかりして通る日々が何日も続いたある日、たまたま朝早くに出かけることがあって何気なくその店の前を通ったら何とお店がオープンしていたのです。私は用事があって早く出たのに、もうこのチャンスを逃したらお店に入れないかもしれないと思って、そのお店のドアを開けました。そしたらそこは私がイメージしていたのとほぼ同じような雰囲気のお店だったのです。正夢を見ているような感覚に陥ったのを覚えています。ドアを開けると左側にカウンター席があり、右側にテーブル席、その上に続く階段の先には大人数用の大きなテーブル席がありました。さすがにコーヒー屋さんにそこまで大きなテーブルはいらないだろうと突っ込みたくなりましたが、天井が高くて奥には薪ストーブもあり山小屋のようなお店でした。

 

ただ一つ違っていたのはお店のオーナーが想像していたよりもずっと若くて、ずっとイケメンだったということでした。いらっしゃいませといったその人は少し微笑んでいました。なぜ微笑んでいたのかと言うと私の顔があまりにも真顔だったから面白くなってしまったそうです。私はカウンター席にすわりたかったのですが、さすがに初めてだし、お客さんは私しかいないようでしたので、テーブル席に座りました。メニューを開くと何とコーヒーの種類がたくさんあってどれを頼めばいいのかわからなくなりました。まして私はコーヒーが嫌いなのにどうしよう。心の中で何度どうしようを連呼したかわかりません。そして考えた結果コナコーヒーにしました。コナコーヒーだけはハワイのコーヒーだと分かったからです。私は無類のハワイ好きでハワイで現地の人とコミュニケーションをとりたいがために中学英語からやり直し英語を始め、週一回キリスト教会で開かれている無料の英会話教室にも通っているのです。だからハワイという言葉やハワイに関するものをみると欲しくなってしまうのです。私はコナコーヒーがあまりに苦いと辛いと思い、本日のケーキというものもオーダーしました。するとコーヒーの豆を挽く音が聞こえてきました。豆から挽いてることに気づきました。豆から挽くということは当分まだコーヒーはこないなとかんじました。それで私はさらに店内を見回しました。素敵だすごく素敵だ。素敵という言葉以外に答えが見つからないほど、そこは素敵なお店でした。海外のコーヒー屋さんにいるみたいな窓を開けたらすぐ海が見えて波の音が聞こえてきそうなそんな空間でした。マガジンラックには本がたくさん置いてありました。その本もたくさんあり、オシャレな本ばかりでした。本を見ていれば一日中入れるかもしれないなと思うほどの本の数でした。本を取りに行こうと思った時コーヒーが運ばれてきました。

 

運んできたのはさっきの店員さんでした。私はドキドキしながら会釈してコーヒーを飲みました。やっぱり苦いとしか言いようがないくらい美味しくなかったのですが、これはハワイのコーヒーだと気合を入れて飲んでいるとだんだんハワイにいるような気分になってきて苦味も気にならなくなってきました。おいしい。思わずそんなことを思ってしまった自分がいました。雰囲気がそうさせたのかもしれませんが、確かに初めて飲んだ時よりもコーヒーを飲み込むのが苦にならなくなってきたのを覚えています。しかし次の瞬間私は地獄に突き落とされるのでした。ケーキが運ばれてきて顔を見上げるととっても小さくて妖精のような透き通った肌をした女の人が立っていました。軽く会釈をしてケーキをもらいました。今日のケーキはシナモンロールでした。私はケーキじゃなくてパンじゃないかと突っ込みたかったですが!そこを我慢してシナモンロールを頂きました。シナモンは少し癖のある味がするイメージでしだがシナモンが控えめに入っているせいかシナモンの香りだけする程度で美味しく頂きました。食べ終わってふと考えたのはその女性とオーナーの関係性です。アルバイトだろうと私は思い込みたかったのですが、夫婦といったほうがしっくりくるくらいお似合いの二人でした。別にオーナーに一目惚れしたわけではないけど、夫婦だったらいやだなという感情が心の片隅にはありました。そのことが頭から離れなくなり、聞きたいけど聞けない、でも帰りたくないという複雑な感じでした。私はその日は予定があったので、コーヒーとケーキのお勘定をしてもらってから軽く会釈をして車に乗りました。そして帰り道ふと気づくと涙が出てきました。何も始まっていないのに失恋したような気持ちでした。そこで私は初めて自分の感情の変化を感じました。それと同時に片思いが始まったのです。それからというもの早朝にコーヒー屋さんを訪れることが日課のようになりました。そしてオーナーとも顔なじみになってきました。いろんな話をしました。ハワイが好きなこと、英語の別にをしていること、コーヒーが好きじゃなかったこと、最近コーヒーがのめるようになったこと、しかき肝心なことはいつも聞けませんでした。ケーキを運んできたのは女の人は誰?奥さんじゃないという言葉を期待していても実際奥さんだと言われたら立ち直れないかもしれないと思うとなかなか勇気が出ませんでした。オーナーはとっても話しやすくて、聞き上手で私をいつもいい気分にさせてくれます。

オーナーの趣味もかっこいいものばかりです。サーフィン、トレイルランニング、サイクリングなどスポーツ全般が好きみたいです。私も若い頃フルマラソンにはまって2回ほどフルマラソンを走ったことがありました。だからいつも大体スポーツの話しやスポーツ選手の話題が多くを占めていました。オーナーもだんだん私と話をすることが楽しくなったのか、ある日お店に行った際カウンターに座ったらとすすめられました。私は嬉しい気持ちを押し殺して、何も感じていないかのような素振りでカウンターに座りました。心の中ではガッツポーズをしているのに。その日も他愛もない話で盛り上がりました。

 

私は人と話をするのが、苦手でしたが、オーナーとだと気楽に話せるし、変な間があっても気にならないので本当に居心地が良かったのです。そして私はオーナーのことが大好きになりすぎ、もっともっと多くの時間を一緒に過ごしたいぞと思うようになりました。そして次に行くときは今まで避けていたこと、あのケーキを運んできた女性の正体を聞こうと思いました。そして私はお店のドアを開けました。いきなり聞くのも不自然だから取り上げえずコーヒーを注文してからにしようと思いお気に入りのコナコーヒーを頼みました。ケーキは何となく頼みませんでした。コーヒーが来て一口だけ飲んでから私は思い切ってオーナーに切り出しました。オーナーは困っていました。明らかに曇った表情を見て私は察しました。今の質問はなかったことにしてください。そういうとオーナーは小さく頷きました。その日はそれ以上会話はしませんでした。コーヒーを飲みながらコーヒーに映る自分の顔を見つめていました。悲しくて悲しくて下を向くとコーヒーに自分の涙がポタポタとたれているのが分かりました。どうしようもない感情が行き場のない自分の気持ちが交錯して頭がこんがらがってきました。お代をおいて私はオーナーの顔も見ずにお店をあとにしました。それ以来私はあのお店に運んで行かなくなりました。行かなければ、会えなければ気持ちも薄れるし綺麗に忘れられると思ったからです。毎日通っていたルートも変えてお店の前すら通らなくなりました。だけど会いたい気持ちはなかなか消せませんでした。あのときは楽しかったな、何も知らなければ何も聞かなけれなずっとずっと話すことはできたのに、まさに鶴の恩返しの鶴になったような気分でした。そして私は鶴のように遠くに行くことにしました。忘れるために全てをリセットするために私はその町を離れることに決めました。しかし新しい街に行っても心の片隅にはモヤモヤしたものが置きっぱなしになっていました。

 

毎朝コーヒーを飲むといつもあのオーナーの優しい笑顔が思い浮かんできます。あの笑顔が大好きでした。あの笑顔さえ見れれば良かったのに、欲を出してしまいました。ごめんなさい。誰に謝っているのかわからないけれど、私はごめんなさいと思いました。

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