ヨーロッパにおけるコーヒーの歴史

コーヒー発祥の地とされているアラビア半島・イエメンのモカ港から積み出されたコーヒーは、ヨーロッパでも新奇な飲み物として16世紀ごろから知られるようになりました。

当初キリスト教社会からは「悪魔の飲み物」として異端視されましたが、後にコーヒー好きだった第231代ローマ教皇・クレメンス8世がコーヒーに洗礼を授けたことで、一般に広く浸透していきました。

ヨーロッパにコーヒーが本格的に普及したのは、大航海時代も終焉に近づきつつあった17世紀中ごろで、ロンドンで商売をしていたレヴァント(東部地中海沿岸地方)の貿易商人・ダニエル・エドワードが、トルコから帰国する際に連れ帰った、シチリア出身のパスカ・ロゼにコーヒーを淹れさせ、客に振る舞っていたことが評判となり、1652年ロンドン・コーンヒルのセント・マイケル通りにコーヒーハウスをオープンしたことがきっかけでした。

コーヒー独特の風味と異国情緒あふれる物珍しさから、ロゼのコーヒーハウスは大繁盛し、わずか10年あまりで、コーヒーハウスはロンドン市内だけで2000軒まで増えるという一大ブームの発火点となりました。

コーヒーハウスが爆発的に増えていった背景には、株式取引所や商品取引所、郵便局の代わりとしての機能などを果たすなど、コーヒーを飲んでくつろぐだけの場所ということだけではなく、重要な社会的機能をも果たしたことにあります。

当時のイギリスは貿易や産業、金融などの分野で世界をリードする存在でしたが、社会インフラの整備は不十分で、人々が集まる情報交換の場や商取引を行うための公共施設がほとんど存在していないことから、コーヒーハウスが多目的ホールのような役割を担いました。

1688年ごろ、エドワード・ロイドという人物が、ロンドンのタワー・ストリートに「ロイズ・コーヒーハウス」をオープンしました。

ロイドは、保険引き受け業者などの顧客に向けた「海事ニュース」を発行するサービスを行い、コーヒーハウスは大繁盛しました。やがてコーヒーハウスに出入りする保険引き受け業者たちが組織化され、現在まで続く世界最大の「ロイズ保険組合」が設立されました。

フランスでも、またたく間にコーヒー文化は普及しましたが、当時のコーヒーハウスでは、コーヒー豆を煮出して飲むターキッシュ・スタイルのコーヒーを提供していました。1554年、トルコの首都コンスタンチノープルに「カヴェー・カネス」がオープンして以来、トルコでは焙煎したコーヒー豆を石臼で挽いて粉末状にし、煮出して飲む方法が広く親しまれており、ヨーロッパでも一般的なスタイルでした。

時代が進み、1763年にはフランスの名もないブリキ職人により、ドリップ式の抽出方法が考案されました。

コーヒーポットの中に、コーヒー粉を入れた布袋を垂らし熱湯を注いで抽出する、このネルドリップ方式の発明は、近代コーヒーの礎が編み出された画期的な発明でした。

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