冬の風情とコーヒー

雪国の冬は、深く、厳しいものです。寒くなると決まって登場するのが「反射式ストーブ」。心ときめく冬のマストアイテムです。
冬場は反射式ストーブの上で焼き芋を焼いたりお餅を焼いたりお豆を炊いたり。それだけで画になってしまいます。
色々と上に乗っている反射式ストーブですが、乾燥防止のために常に乗っているのがやかんです。常にシュンシュンと蒸気を出しながらそこにいて、たまにうっかり空焚きしてしまい慌てて給水してあげたりします。

寒いと温かい飲み物が飲みたくなります。朝起きてまず飲みたいのがコーヒーです。
寒いのでまずストーブをつけて、懐かしいストーブのにおいが部屋中に広がります。そしてやかんに水を入れてお湯が合わくのをストーブの火を見ながらのんびりと待ちます。
あっという間にお湯が沸くので、カップになみなみとお湯を入れて器を温めます。ちょっとしたひと手間が大事です。
コーヒーは挽いてあるものを買ってきているのですが、味や産地には詳しく無くて、飲んでみて美味しいなと思ったらそれが好き、自分の好みを基準に舌で選んでいます。
コーヒー好きで詳しい人に言わせれば私の好きがよく分からないようなのですが、趣向品の好き嫌いは恋愛に似ているというのが私の持論で、私はフィーリングが大事ということなのです。

ドリッパーにフィルターとコーヒーをセットしていよいよドリップをするのですが、コーヒーの淹れ方は素人の私です。同じコーヒー豆でも味が毎回違うので、常に美味しく淹れられるプロは流石すごいなとつくづく実感できます。
反射式ストーブからぐらぐらとお湯が沸いているやかんを手にとり、最初は蒸らすために少量のお湯を入れます。途端にストーブのにおいに混ざって香ばしいけど優しいコーヒーの香りが立ち込めます。
じっくりと蒸らしたらいよいよお湯を注ぎ始めます。
外側から中心に向ってぐるぐると絶え間なくお湯を注いで、きめ細かな泡が膨らんで何とも芸術的な、その様を眺めているだけでワクワクしてしまいます。しゅわしゅわっと音が聞こえるようで、コーヒーを淹れているこのわずかな時間は五感が研ぎ澄まされるようです。

部屋はまだ肌寒く、はーっと吐く息は白いため、コーヒーの湯気はゆらゆらと何とも幻想的で、早くそれが飲みたくていそいそとドリッパーを外します。コーヒー殻は消臭効果があるというので少しキッチンにおいておきます。
そして、ストールを羽織りながらストーブの前に椅子をもってきて腰かけます。目の前では赤々と一生懸命にストーブは燃えています。
冷え冷えの足の裏をストーブにあたりながら熱々のコーヒーを熱々のまま口に含み、染み渡る熱さにはーっと息を吐けば、やはり白い息がコーヒーの香りが混ざってほわーっと吐き出されます。
かじかむ手は、カップは取っ手を持たずに直にボディを持つので、優しくじんわりと温まっていきます。
そうしてコーヒーが体内に流し込まれていき、体はようやくエンジンがかかりだします。
冬場の朝一番のコーヒーは、薄暗く寒いこの時期には特別幸せなものになるのです。

また、雪国ならではですが、白銀世界になると余計にコーヒーの美味しさが際立ちます。
窓から眺められる雪景色。陽が短く昼を過ぎるとあっという間に暗くなりますが、そんな貴重な昼下がり。
外を眺めながら暖かいこたつに入って飲むコーヒーのおいしさ。
反射式ストーブに並んでマストアイテムがこたつです。
先述したようにストーブで沸かしているお湯でコーヒーを淹れたなら、一息つくためにこたつに入るのです。
ストーブで炊いた甘いお豆をつまみながら、外を眺めながら、ブラックコーヒー。
外は真っ白で風が吹くたびにパウダースノーが宙に舞います。きらきらと輝く雪を眺めて、コーヒーを一口。
「このコーヒーを飲んだらゆきかきしよう」と独り言を言いながら、また一口、とチビチビと飲み進めます。
外では相変わらず風がビュービュー吹いていて、時々窓がガタガタと揺れます。
「もう一杯飲んでからにしようかな」とまた独り言を言いながら、なかなかこたつから出られないのです。
お豆もコーヒーも進みます。ストーブの上ではだいぶ蒸発したのかカラカラと音を出しながら蒸気を出すやかん。
手の中で少し冷めてしまったコーヒーにため息をつきながらそれを飲みほし、ようやく重い腰を上げて雪かきに取り掛かります。
外から眺める、こたつの上のコーヒーカップに後ろ髪を引かれる思いをしながら。

寒さが厳しいからこそ、コーヒーの温かさがじわじわと身に染みて特別に一段と美味しく贅沢に感じられます。
凍てつくような寒い日にそのまま寒さに震えて、コーヒーの温かさと香りに癒されて長い長い冬を楽しみながら乗り切るのです。
四季がある日本だからこそ、季節ごとのコーヒーの楽しみ方があるのです。
奥深いコーヒー。冬以外の美味しさももちろん知っています。
一杯のコーヒーで幸せを感じられる、そんな日常です。

コメント