北欧スウェーデンのコーヒー

コーヒーが好きなお国柄といえば、スターバックスの生まれたアメリカや、エスプレッソで有名なイタリアをイメージするかもしれませんが、年間の消費量でいうと実は北欧が断トツでナンバーワンというのをご存じでしょうか。

寒くて暗い冬が長く続く北欧では、屋内で飲む温かな1杯をとても大切にしています。中でもコーヒーは、学生から年配の方まで幅広く親しまれており、日常に欠かせない飲み物となっています。

2014年度の世界1人当たりのコーヒー消費量を見ると、ベスト10の中にフィンランド、スウェーデン、ノルウェー、デンマークなど北欧勢が続々とランクイン。12位がイタリア、13位がアメリカというのを考えると、いかに北欧の人たちがコーヒーを好んでいるかということがよく分かる結果となっています。

そんなコーヒー先進国の北欧の中で、スウェーデンはフィンランドに次ぐコーヒーの消費量を誇ります。そしてそのスウェーデンには、他国にはない独自のコーヒー文化が根付いています。それが「Fika(フィーカ)」です。Fikaは、親しい人と一緒にコーヒーを飲みながら過ごす時間のことを指し、スウェーデンでは「お茶しない?」という意味の「Ska vi fika?(スカ ヴィ フィーカ?)」というフレーズが少なくても1日に1回、多ければ2~3回使われます。

でもこのFika、ただのコーヒーブレイクではありません。というのも、コーヒーブレイクはひとりでも楽しめますが、Fikaをする時は必ず誰かが必要です。家族や友人など、気心の知れた仲間とコーヒーを片手に語らい、コミュニケーションを深めることに意味があるのです。

スウェーデンでコーヒーが飲まれるようになったのは、約300年前と言われています。ちょうどその頃に、家庭でコーヒーの抽出ができるようになったことから、新しい習慣としてコーヒーパーティーが開かれるようになりました。それ以来、仲間と一緒にコーヒーを楽しむことが生活の中に浸透し、そこからFika文化へと発展したのです。現在ではスウェーデンの街のあちこちにカフェが立ち並び、いつでもどこでもコーヒーを楽しむことができます。そんな風に、コーヒーを飲む環境がしっかり整っていることも、Fika文化を後押ししている要因のひとつと言えます。

また職場でもFikaは欠かせない存在です。会議とは違って気さくに意見を言い合えるため、あらたまった場を設けるよりもアイデアが出やすく、時にはプライベートな話をすることもあり、社員同士の結束が強くなることからFikaが推奨されているのです。

そのため仕事の手を休めて誰かとコーヒーを飲みかわしていてもさぼっていることにはならず、特に咎められることもありません。またダラダラと仕事を続けるよりも、15分~30分ほどFikaを挟んでクールダウンし、メリハリを付ける方が作業効率がアップするという結果も出ています。そのため企業によっては、わざわざ本格的なコーヒーサーバーを置いてFikaの時間を設けているところもあるそうです。

またFikaにはもうひとつ特徴があります。それが、コーヒーと一緒に焼き菓子を用意することです。代表的なものをいくつか挙げると、まず最もオーソドックスなものが「シナモンロール」です。実はシナモンロールはスウェーデンが発祥なんです。そのため、スウェーデンの人々にとっては古くから馴染みがあり、大人から子供まで世代を超えて愛されています。

続いて、ひと口サイズで食べやすい「チョコボール」も人気です。カカオとオートミールを混ぜてボール状にしたものにココナッツやパールシュガーをまぶしたチョコレート菓子で、最近では北欧家具店のIKEAで販売されるようになったことから、日本でも目にするようになりました。

他にも、パンにアーモンドクリームと無糖ホイップクリームを挟んだ伝統菓子「セムラ」や、ジンジャーやスパイスを効かせた「薄焼きクッキー」など、Fika用のお菓子はたくさんあり、スウェーデンのお菓子屋さんやスーパーに行くと様々な種類を目にすることができます。

ちなみにスウェーデン人がコーヒーを飲む杯数は、年間800~1000杯と言われており、1日に換算すると約3.2杯。日本は年間約300杯で、1日平均では0.9杯ということですから、わたしたちの3倍以上飲まれているんです。「Fikaのない生活は考えられない」とスウェーデンの人たちが言うのもうなずけますね。

最近では、北欧の豊かな暮らしを象徴する存在として、Fikaは文化でありながら「芸術的」とも称され、NYやロンドン、オーストラリアをはじめ世界中から注目を集めています。日々の忙しさに追われていると、つい今この瞬間を楽しむということがおざなりになりがちです。

そんな時、コーヒーでほっとひと息つきながらたわいのない話に花を咲かせることは、日常にささやかなアクセントをつけることにつながるはず。スウェーデンの人たちにならって、わたしたちもコーヒーを通してそんな心の余裕を持ちたいものです。

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