甘美で苦い…恋と珈琲

話す気になったのは時間が経ったからだろうか、誰かに聞いてもらいたいが、ずっと話せずにいた過去。
傍から見ればただの失恋話し。
でも私にとっては忘れられない思い出です。
昔から人の世話を焼くのが好きな私はよく肩をもんで喜ぶ顔をみるのが好きでした。
その延長戦で、私は整骨院で、体の悪い所を良くしていく仕事に携わることとなりました。
老若男女、様々な体に不調を抱えた方がこられます。
体の悪い人に触れていると、時折ですが、自分の体もとても重く感じることがありました。
そんな重い気分を切り替えてくれるの私の必須アイテムはブラックコーヒーです。
良い香りと、適度な苦みが気持ちを落ち着かせ、次の頑張りにつながります。
そんなある日、出会ったのは私が26歳の時、2歳年下の女性でした。
当然と言われたら、当然ですが、私は整骨院へ治療に来られるかたとお付き合いしたことがございません。
他の治療院では分かりませんが、私の働いていたことろではスタッフ全員が患者さんと結婚又はお付き合いをしております。
私は、業務に支障が出ては困るので公私混同しないように努めておりました。
2歳年下の女性は、私が診ることとなりました。
働いているOLさんなども通うところなので、綺麗な女性がわりと多く来院してきます。
ですので、私の中では2歳年下の女性も来院してくる綺麗な女性の一人としての認識でしかありませんでした。
しばらく通っておりましたが、突如通院がなくなりました。
理由は様々です。
経済的な理由、治療が合わなくなった、もっと良い場所が見つかった、なんとなく。といった具合です。
まだ背中の痛みが続いていたので、気にはなりましたが、来るか来ないかは自由ですので、深くは考えないようにしました。
更にしばらくして、久しぶりに2歳年下の女性が通院して来ました。
カルテもあるので記録はしておりましたが、印象にのこる顔立ちでしたので、すぐに思い出しました。
久々の再開につい、背中の痛みがあれからどうなったのか気がかりだったこと、連絡しようかと思ったくらいです。
と、ちょっと引かれるかなと思う発言をしてしまいました。
意外なことに彼女は笑顔で、私も連絡取りたいと思っていたので、番号交換しませんかと言われました。
喜んで。と私の携帯番号と彼女の番号をコッソリ交換しました。
その時すでに彼女のことが好きだったのかもしれません。
仕事が終わり、その後の経過はどうですか。といった理由付でその日のうちに電話しました。
それからは毎日のように電話しました。
分かったこと。
彼女には5歳の子供がいたこと。
彼女はシングルマザーをしていること。
現在、アパートを借り、色々苦労を重ねた結果、最近体調が優れなくってきたことでした。
私は料理が得意なので、今度元気の出る要理でも作ろうかと、伝えると是非とも食べたいとのことでした。
約束その日になり、子供が保育園へ行っている間に、お邪魔し、料理を作りました。
さて、帰ろう。
とはならず、彼女のぶっちゃけ美しさに負けて、保育園のお迎え、一緒に食事をしました。
彼女の子供も人見知りをすることなくボールを投げて遊び、そして遊び疲れと満腹で彼女の子供は寝始めました。
さて、本当にそろそろ帰ろう。
帰っちゃうの?と言われ振り返ると。
黒目の大きな彼女が潤んだ瞳でこちらをじっと見つめてきます。
す、凄い眼力です。
気づけばなんか具合も悪そうです。ちょっと横になろう。
そう声をかけ、彼女を横にさせ、私は横に座りました。
彼女が手を握ってきました。
繰り返しますが凄い眼力です。
吸い込まれるように気づけば彼女にキスをしていました。
そのまま、お互いに抱き合い、一晩を共にしました。
2歳年下の女性と正式にお付き合いすることになりました。
彼女の子供も私をちぇんちぇ~(先生)と呼び、仲良く遊ぶ時間が多くなりました。
彼女の作る料理もとても美味しく、私がコーヒーが好きだと言うと、わざわざコーヒーミルを購入し、私にコーヒーを淹れてくれました。
彼女の料理も、彼女が入れてくれたコーヒーも最高に美味しい幸せなひと時でした。
体の相性も感動するほどバッチリでした。
子供が寝静まると、お風呂でも布団でも、激しく求めあいました。
彼女が上になると、全て吸い上げてくる感覚は今までで初めての体験です。
終わった後に、抱きついてきたときは、余りの気持ちよさに意識が飛びかけました。
一度だけでは良かった感覚が忘れられず、何度も何度も抱きました。
基本は一度で力を使い果たす私ですが、こんなことは初めてでした。
多少ではありますが、私には経験がありましたが、意識が遠くなるほどの経験は今を思い出しても、後にも先にも彼女が初めてでした。
出産を経験すると少し緩くなるなどという話を聞いたことがありましたが、あれはデマであると実感しました。
そこまで素敵な女性と何故結婚をしなかったのか。
これは私が未熟者で、子供だったからです。
ある日、彼女達とプリクラを撮り、すごく美人な彼女をつい自慢したくなり、上司に惚気話をしてしまいました。
ただ、子供がいることが悩みだと伝えると、上司から「これほど綺麗な女性ならお前が居なくなれば、すぐに他の男が出来るよ。
つまり、お前でなきゃだめなのではなく、お前が彼女を娶るか、他の男が娶るのか、それだけだよ」と
良く考えなさい。でもチャンスを逃したら次は無いよと。
胸にささり・・ませんでした。
今でも覚えているのですから、心のどこかでは刺さっていたのでしょう。でも私はどこかで
子供つきの女性は苦労すだけだから止めなさいと言ってくれる人を探していたのかもしれません。
それほどまでに覚悟が足りませんでした。
結婚ってまだ早いだろうと。
結婚を通り越して子持ちって。
それぐらい自分にとって結婚は遠いところに存在し、まだまだお付き合いを楽しみたいと考えておりました。
そんな不純な動機に満ちていた時、元カノから会いたいとメッセージ。
アドレスは消しておりましたが、私のアドレスは昔のままでした。
ふと懐かしさにかられてOKの返事をだしました。
元カノから、今はもう付き合っている人はいるのかと問われ、私は居ないよと答えました。
彼女の子供は嫌いではありませんでしたが、子供ことを考えると不安で一杯な私は、ついフリーな気持ちになりたくて、でてしまった一言でした。
元カノから、誰もいないとこころでゆっくりしたい。と言われつまりそういうことか、と私は二人でゆっくりしようと答えました。
最近は家族を持つことに考えすぎ、親にどう話したらよいのか、相手の親にどう話せばよいのか
自分はこのままで良いのかと考えると、彼女の家に行くのも億劫になり、彼女を泣かせてしまうこともありました。
彼女の家についても体は重く。
「すまない、ちょっとよこにならせて。」と食事中にもかかわらず、ソファーのある奥野部屋へ行き、考え込んでしまう日々でした。
そんななの元カノからのお誘いでした。
気分転換がしたければもっとほかにも方法があったはずなのに、私は最低の気分転換を選択しました。
彼女の家からの出勤はこれで何度目だろうか・・
彼女が今日も会社の近くまで車で送ってくれると言ってくれました。
いつもの淹れたてのコーヒーを飲み、いつもの朝食をとり、当たり前のように車へ乗り、会社へ向かいました。
彼女が停めてくれる、いつもの場所です。
患者さんに見られたら恥ずかしいと言う、私の我儘で、会社の少し手前に停めてもらってます。
突然「ごめんなさい。」
謝られました。
「本当にごめんなさい。」
意味が分かりません。
「携帯・・見ちゃった。」
あ、そういうことか。
会う約束のやり取りから、デート内容までの流れ
デート内容と言うか、お互い関係をもてるところへ行く話しのメッセージまで、すべて読まれました。
昨日、私がお風呂に入っている時に読んだそうです。
「私、彼女だと思って凄い嬉しかった。けど違ったんだね。」
泣きながら言われました。
泣かせてしまいました。当然です。最低です。ゴミ屑です。
あんな綺麗な瞳から涙があふれています。
あんな綺麗な人は今まであったことがありませんでした。
あんなに料理が上手な人は初めてでした。
あんなに夜の関係が良かったのは初めてでした。
私がコーヒーが好きだと言えばコーヒーミルを買ってくれ、
私がストライプのワイシャツが好きだと言えばプレゼントしてくれ、
あんなの私のことを想って、好きでいてくれたのに、私は全ての想いを彼女へ裏切りと言う形でお返ししてしまったのです。
私は彼女の事が大好きでした。
大好きだからこそ真剣になやみ、中途半端な気持ちで結婚を考えてはいけないと悩み子供に不幸な思いをさせてはいけないと考えあぐねそして、気持ちのゆるみが私を安易な快楽の誘惑に負けた結果がこれでした。
「別れよう」
彼女に言われました。
彼女の涙は止まりません。
私は無言で立ち去りました。
外は雨でした。
私も泣いてました。
自業自得。
因果応報。
自分の行いは良くも悪くも最終的に自分へと帰ってくるのです。
何故、彼女の気持ちへもっと答えてあげれなかったのだろう。
結婚はしたい。でも子供のことを考えると不安も沢山ある。
でもあなたのことが好きです。と何故正直に話さなかったのだろう。
今日からまた缶コーヒーです。
美味しくないです。
でも、コーヒーミルは・・
彼女を思い出してしまうので手が出せません。
彼女は患者として来ましたが。
私は患者として接しよけいなことは話しませんでした。
2回来てくれましたが、3回目はありませんでした。
彼女の最後のチャンスだったのでしょうか。
自分のふがいなさに失望して何も話せませんでした。
へたれです。
彼女から連絡がなくなり、私はついに整骨院を辞めることになりました。
東京へ行くためです。
東京に行く前に最後に、一度だけ彼女に電話をしましたが繋がりませんでした。
あれから何年も経ちますが、ずっといまでも情けなく鮮明に覚えてます。
私の為に、コーヒーミルを買ってくれて、美味しいコーヒーを毎朝いれてくれて本当にありがとう。
そしてごめんなさい。今でも私がしでかした後悔と出会ってからの彼女への感謝の気持ちで溢れてます。彼女が淹れてくれたコーヒーのように甘美で苦い恋愛でした。

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