コーヒーとチョコレートのほろ苦い類似点

Pocket

コーヒー好きの中にはチョコレート好きも多そうですね。
じつは、コーヒーとチョコレートには、いろいろと類似点があるんです。
嬉しい類似点もあり、悲しい類似点もあります。
豆をローストするとおいしくなる

コーヒーは生豆では食べられません。コーヒー豆は生のままでは渋くてとても食べられません。
ローストする、つまり焙煎することであの香りや苦味が出てくるのです。
なんとも不思議ですね。

チョコレートの原料であるカカオも同じです。
ローストして初めて人間の口に入るものになっていきます。
チョコレートは、このカカオ豆を発酵させて幾多の工程を経て、あのおいしさを実現しているのです。
茶色くて苦い

コーヒーは茶色くて苦いのが特徴です。
そのほろ苦さが、精神的また肉体的な疲労を和らげてくれます。
休憩時にコーヒーが飲まれるようになったのも、その効果が知られるようになったからでしょう。

チョコレートも茶色くて苦いのが特徴です。
ほろ苦いからこそ、チョコレートは好まれるのです。
野菜や果物、穀物などの食品でも、こうした茶色と苦味が好まれるものはほかにあまりありません。
じつに不思議な存在です。
コーヒーベルトとカカオベルト

「コーヒーベルト」という言葉をどこかでお聞きになったことがあると思います。
コーヒーベルトとは、コーヒーを生産できる地域が地球を取り巻くベルト状になっていることからきています。
コーヒーの産地を思い浮かべてみると、ジャマイカやキリマンジャロ、ブラジルといった暑い地方がとても多いですね。
そうです、コーヒーは暑い熱帯地方でしか生産できないのです。

もっと具体的にいうと北緯25度より南側、南緯25度より北側という赤道を挟んだベルト状の地帯がコーヒー産地となっています。
日本の最南端である沖ノ鳥島は北緯20度ですから、国産コーヒー豆を生産するのは夢といえそうです。

これに対して、チョコレートの原料であるカカオが生産できる地帯のことを「カカオベルト」と呼んでいます。
カカオベルトはコーヒーベルトよりさらに狭くて、北緯20度から南緯20度のベルト状地帯でしかカカオは生産できないのです。
ベネズエラやエクアドル、またガーナといった赤道にごく近い地域が生産地となっています。

コーヒーもチョコレートも高いな、と感じることもありますが、地球のごく限られた地域でしか生産できないものをみんなで分け合って食べているのですから、仕方がないのでしょう。
コーヒーもチョコレートも産地で味が違う

コーヒーのブランドは産地がそのままブランドになっていることは、皆さんもご存じでしょう。
ブルーマウンテンやキリマンジャロなどがそうですね。
産地によって酸味や苦味が違い、それぞれにファンがついています。

キリマンジャロは酸味がすっきりしていて、香りが高い。
ブルーマウンテンは酸味も苦味も控えめで香りがとても濃厚。
ブラジルは酸味も苦味もコクもほどよくバランスがとれている。
ここにコーヒー通の好みがでるのです。

実はチョコレートも同じです。
つまり、カカオの産地によって作ったチョコレートの味わいが変わるというのです。

コスタリカは酸味が少なくてマイルド。
エクアドルはコクがあって花の香りのような芳香。
ガーナは軽くて甘い風味。

一般的なチョコレートは、複数の産地のカカオをブレンドして製造します。
しかし、こだわりのチョコレートになると、ひとつの産地のカカオだけを使って産地別の味わいを楽しむのです。
オレはマダガスカルが好き。
あたしは絶対ガーナかな。
コーヒー通のあいだで交わされるような会話が、チョコレート好きのあいだでも交わされているのです。
コーヒーとチョコレートと南北格差

南北問題という微妙なズレにおいても、コーヒーとチョコレートには類似点がみられます。
コーヒーベルトという赤道を挟んだ熱帯地方でしか生産できないコーヒー。
もちろん、このコーヒーを飲むという習慣は産地の熱帯地方で始まったのですが、それがヨーロッパへ伝わりアメリカへ伝わるにつれて普及が加速しました。
そして世界最大の消費地はしばらくアメリカだったのです。
つまり、暑い熱帯地方で作られたコーヒーは寒い欧米で消費される、南で作られ北で消費されるという仕組みが出来上がりました。

コーヒーが利益を生むと知った欧米人は、南の産地の農園を支配して安い労働賃金でコーヒー豆を作らせます。
高級な品質の高い豆は欧米へ納品され、地元では飲むことができないという不思議なケースもみられるようです。

カカオも、カカオベルトと呼ばれる熱帯地方でしか生産できません。
産地では飲み物として楽しまれてきたようですが、固形のチョコレートが開発されたのはヨーロッパにおいてです。
オランダでココアバターとココアパウダーを分離する方法が確立されました。
日本でもその名がよく知られているバン・ホーテンです。
その後、イギリスで固形のチョコレートが開発されました。

じつは、みなさんもご存知と思いますが、チョコレートという食べ物は暑いと溶けてしまい原型を保てません。
つまり、暑いカカオベルトでは原料のカカオを生産することはできても、製品としてのチョコレートが存在することはできないのです。
そして反対に、チョコレートが楽しまれている北の国々では絶対にカカオを清算することができないのです。

地元でどんなに良質のものを生産しても、生産者がその味を楽しめないという矛盾。
コーヒーにもチョコレートにもつきまとう、この南北問題は世界の不思議を浮き彫りにしています。

コーヒーとチョコが食べてて相性いいのも納得ですね。

 

コメント