怪しい男

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恋愛は突然やってくるのでしょうか、突然起きるとするとどんな形で男女2人を繋ぎ合わせるのでしょうか?私の場合は一目ぼれです。

 

以前男子学生と付き合っていたのですが、その人はある日急に何の連絡もなくなり大学にも出てこなくなり聞くところによるともう学生を辞めてしまったと言う事です。男はつらいのではなく男は弱いなと思い過ごしていました。そんな私の前に見るからに怪しそうな、うさんくさい何とも言えない男が現れたのです。

 

靴など履かずサンダルで移動する姿は男女両学生の間でも少し噂になっていました。顔は良い方で特筆するのはその力でした。バカ力の持ち主、別にいいですよいろんな人がいてと思いました。

 

そしてその男子学生、朝は必ずモーニングのコーヒーを喫茶店で飲んでくるらしいと聞いて、尚更うさんくさい感じに思えたんです。ところが意外な事に先生方の評判は良くて頭が良いとの事です。私はその男を見て直ぐにこの人だと思ってしまったのです。

 

私も変わり者なのかもしれません。人生は本当に何が起こるかまた何が功を奏するかわかりませんね。噂で聞いているより実際に会うと一層普通の男子学生とは違った印象を受けます。ある日、私は帰る方向が一緒なのかたまたま同じ道を帰る事になりました。そしてその男が歩いていると言うか闊歩しているので先に帰ろうと追い抜いたときにその男は私に声をかけたのです。

 

地下鉄の駅はどう行くか聞いて来たので、行先は私とは違いましたが、それで仕方なく教える事になりました。その男は解ったのか解っていないのかフンフン、ハイと真面目に聞いているんです。解りました、では教えてくださったお礼にコーヒーをどうですかと言うのです。おいおいナンパかよしゃあねえなと心の中で思いながらも、いいんですかお茶頂いてと言ってしまったのです。

 

結局喫茶店に入りコーヒーを飲む事になりました。行き先が違うのでついてこられたりする事は無いようなのでOKとしました。ちょっと興味があったのと話のネタにと思って。コーヒーを頼みましたが初めて交わした言葉が、大学面白い?でした。はあまあそこそこ、と言ったと思います。そして怪しい男は、俺は経済学部です経済の理論と言うより数学を使った金融を勉強してるんですと言いました。そこまでは覚えているんですが後は世間話ですね。

 

結局話を適当に合わせているとなると、好意を持っていたのかどうかわかりませんね。しかしまた喫茶店でお茶にしようと約束する事になって彼と別れました。面白い話もあって結局心はもう奪われているようでした。何故か?彼は特別の考え方を持っていてスピリチュアルな話が面白く映画の事もよく知っていました。

 

自分のやりたいことをしてきた結果、それにお金を使い買う服も限られているのだと思っていました。コーヒーも毎日飲んでいるようだしと思っているとこれが違うんです。実は彼、鉄工所の社長の息子さんで仕事をしているようです。だからアルバイト料をもらっている。その代り仕事で大学に来なかったりする場合もあるようです。

 

よくある光景でとび職の人やペンキ屋さんなど洗濯しても取れない汚れがありそのままお弁当を買いに行ったり電車に乗ったりしてますよね。それを思えばぼろい汚れた服もなるほどと思ってしまいます。彼の汚れた服装も決しておかしくない訳です。それ以来服装は気にならなくなりました。やはりコミュニケーションは大事ですね。私の第一印象は簡単に別のモノになり、変に思いながら彼を見ていたことが少し悔やまれました。

 

彼は長男でしたがお父さんの仕事は次男の弟さんが継ぐようで、本人は金融機関に行きたいとの事。数学が出来るのでそれを武器にしようとしているらしいです。就職は一応国立大なので何とか出来ると思いますが第一志望に合格するかこれはわかりません。しかし仕事をする気があると言うのが大事で、仕事をする気がないとなれば相手にできません。専業主婦が主流でバリバリ仕事をする人は未だ少数派でしたから。

 

喫茶店を出て彼は私の教えた道を歩いて地下鉄に乗って帰りました。少し見送っていたのですが、大丈夫そうなので私も家路に着きました。それからは彼の事を考える時間が増えてきました。今何してるんだろうとか、大好きなコーヒーを飲んでいるのかなとか、又ある時は誰かナンパしてるのかコラとかいろいろ考えてしまいます。致命的なのは連絡先と彼女がいるかどうか聞いていない事です。

 

今度会うって何時よ、はっきりしてよとか考えだしてしまって勉強しながらも気になっていました。まあいいコーヒーを飲みに行くと約束したんだから大丈夫だろうと思い、恐らく喫茶店に行くだろうと思いその間の40分か1時間の間に聞く事を密かに考えていました。ところが全く会う事がないんです。こんなものだよね、だから男はいい加減に出来ているんだと思いながら友人と学食を食べていました。

 

すると、おう、久しぶりどうしてたと後ろから声が聞こえて、振り向くとそのかつてのうさんくさい彼が定食をもって話しかけてきました。私の中では彼に昇格しているんですが。そして私も、あ、あのと言ったのだと思いますが友人に言わせると非常に喜んでいるように見えたそうです。それでテーブルの向かいに座って2人の友人に挨拶して缶コーヒー如何ですかと言っています。

 

私は無性に腹が立ってどうしてたのよ!うそつき!と言ってしまいました。彼はポカンとして何のことか解っていないみたい。まるで口だけじゃない腹の立つう、と思いながら友人がまあまあとその場を収めてくれたので良かったです。どうやら仕事が立て込んで入っていたらしく単位を落とすのは良くないし結構大変で、彼女どころではなかったみたいです。

 

それで3週間ほど時間が取れなかったようなので仕事では文句言えないし、少し怒っていましたが友人もいるしと思って黙っていました。するともう時間が取れるからコーヒー飲みに行こうと言ってくれたので少しご機嫌が直り、友人2人は授業へ私はもう今日は休みにして、彼にも休みにしてもらいお昼からは話をする事にしました。それで段々と心が穏やかになりさっきはごめんねと言って謝ると、いや気にしていないと言って仲の良い感じが戻ってきたのです。

 

それからは2人で学食を食べに行く事も増えてきて意思の疎通が出来るようになり休日はデートをするようになり夕食を食べて後は喫茶店でコーヒーを飲んだりするようになりました。そしてちゃんとお互いの両親にも紹介し結婚と言う事に。昭和が終わる頃の恋物語です。

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