旦那さんの淹れるコーヒー

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コーヒーを楽しむ時間を大切にしている。

 

人それぞれ、コーヒーを楽しむ時間というのは違う。朝食の後の一杯を楽しみにしている人もいるだろうし、友人とランチやおやつを楽しみながら飲むコーヒーが一番美味しいという人もいるだろう。

 

私にとって、一番美味しいコーヒーは朝仕事へ行く前に飲むものである。

 

信州の冬は寒い。車のフロントガラスが霜で真っ白になって、澄み切った空気が家々をキンキンに冷やす朝。いつまでもぐずぐずしていたい暖かい布団の中から、えい!と頑張って抜け出して、旦那さんと自分の為に朝食を作る。
目覚ましはいつも、出勤時間と食事や準備の時間を合わせても余裕がある時間に鳴るようになっている。

 

昨年買ったアルパカの顔が付いたモコモコのスリッパを履いて、眠さと寒さを乗り越えながらキッチンに立つと、できるだけ早めに朝食を準備する。
これは早くご飯を食べたいわけではなく、朝のお楽しみのためである。

 

大根とわかめが入ったみそ汁と、炒り卵を急いで用意すると、私は寝室へ行って旦那さんの布団の中に潜り込んだ。暖まった布団と旦那さんを抱き枕に、5分か10分くらいゴロゴロするのが私の日課なのだ。暖まった布団と旦那さんというのは、とても心地よい組み合わせで、病み付きになった私はこの時間を楽しむ為に、毎日せっせと早起きをする。

 

しばらくゴロゴロしてから二人で一緒に起きだして、朝食を食べ終わると、いよいよお楽しみのコーヒータイムがやってくる。

 

起床から出勤時間までの間にはちゃんと、コーヒーを楽しみながら、二人で一緒にテレビを見る時間が組み込まれているのだ。これは、どんなに仕事が嫌で憂鬱だろうと、寝不足であろうと、コーヒーというのはゆっくり余裕を持って楽しむものと私の中で決まっているからだ。コーヒー好きの私に抜かりはない。

 

私が食器を洗っている間に、コーヒーを淹れるのは旦那さんの仕事である。
ミルにコーヒー豆を入れ、ガリゴロガリゴリと豆を挽く。

 

旦那さんは結婚するまで、コーヒーはインスタントだけであったが、私が毎朝食器を洗った後に自分で持ち込んだミルでせっせと豆を挽いているのを見て、自分がやるよと申し出てくれた。

 

旦那さんがケトルから、そろそろとお湯をコーヒーの上に落としていく。
挽きたての豆は、ガリゴロいっていた時から味わい深い香りを漂わせていたが、熱いお湯が注ぎ込ませるとさらにその香りを増す。

 

ふんわりと温かい湯気を纏ったコーヒーの香りが、部屋に広がっていく瞬間が好きだ。お湯で出来たコーヒードームは小さな泡をふつふつとさせながら、魅惑の黒い液体を生み出していく。

 

ちなみに、ペーパードリップでコーヒーを淹れる場合、ドリッパーの種類が色々あるが、皆様は何をお使いだろうか。

 

私はコーノ式を使っている。三角錐型の底に、穴が一つだけ空いているタイプである。今までメリタ式、カリタ式、スパイラルなど、色々と使ってみたが、結果コーノ式が好きだ。

 

メリタのように思わせぶりな風もなく、カリタ程せっかちではない。スパイラスはまるでコーヒーの迷宮に導かれるような魅力を感じるが、ガラス製なので割れるのが怖い。という理由から、私はコーノ式の物を長年使っている。道具の種類やお湯の注ぎかたが違うだけで、コーヒーの味というのは変わってくる。美味しいコーヒーを求めるということは、実に奥深い世界なのである。

 

美味しいコーヒーといえば、最近になってから知ったが、コーヒーは人に淹れてもらった方が美味い。
何故だろう、何故だろうと飲みながら思うのだが、旦那さんの淹れてくれたコーヒーは自分で淹れたものよりも遥かに良い香りがするのである。これこれ。これが私が求めていた美味しいコーヒーだ。不思議だなぁ。

 

コーヒーを楽しんでいると、無情にもあっという間に出勤時間が近づいてくる。

 

準備をしないとと立ち上がりかけて、テーブルの上に乗った自分のマグカップを見ると、まだ茶褐色の液体が半分ほど残っている。
それをぐいっと飲み込むと、コーヒーの旨味が口一杯に広がった。
美味い、よし行くか。仕事へ行く為のエネルギーを補充した気分になる。毎朝単純な私である。

 

コーヒーの楽しみ方は人それぞれ。一人で飲んでも誰かと飲んでも、コーヒーは美味しくなる。
一人での楽しみ方は知っていたが、結婚してから人が淹れてくれるコーヒーの美味しさを知った。
美味しいコーヒーをありがとう。旦那さんには感謝しきりである。

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