コーヒーを飲む男性は恋愛に有利になる

あまり多くはないコーヒー男子は意外と多くの女性が興味を彼氏にしたい方が多いということを知っていますか?モテると言われていた料理男子ですがコーヒー男子はそれ以上に実はモテると言われています。今回はなぜコーヒーが好きな男子が恋愛で有利になるのか詳しく説明をしていきます。 続きを読む コーヒーを飲む男性は恋愛に有利になる

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仲直りのコーヒー

どちらかというと紅茶党だったわたしが、コーヒーを好んで飲むようになったのはいつの頃からだろう。はっきりとは思い出せないのだけれど、いつの間にか、紅茶ではなくてコーヒーがある生活が当たり前のようになっていたような気がしてくる。今も手にしているカップの中に入っているのはコーヒーなのである。

 

さっきまではお互いにそっぽを向いて口もきかずに、ちょっと長引くケンカをしていたくせに、色違いのカップ&ソーサーでコーヒーを味わいつつ、今この瞬間、二人で顔を見合わせて、幸せだねとか言っている。まったりとした至福の時間に身をゆだねながら、ふと昔のことを思い出していた。
子供の頃は、コーヒーは苦手だったと思う。カルピスやジュースのように甘くて色も綺麗な飲み物の方が魅力的だった。白やオレンジ、ピンクや黄色、カラフルな世界はおとぎ話のようで、そんな甘い世界の方が好きだったのかもしれない。それに比べて、茶褐色のコーヒーは、子供ごころに色はかわいくないし、あまり興味のない飲み物だったこともあるだろう。

 

でもある日、大人がおいしそうにコーヒーを飲んでいるのを見て、真似してコーヒーを口にしてみたことがあった。コーヒーが飲めたら、大人の仲間入りができるような、そんなちょっと誇らしい気分になれるものと思った。でも、一口含んだコーヒーは、苦くてとてもおいしいとは思えるものではなかった。コーヒーをおいしく飲めないわたしはなんか大人の仲間入りができないようでちょっと口惜しい思いをしたように記憶している。
少し大人になって、といってもまだまだ思春期まっ只中だったけれど、当時の憧れの先輩と喫茶店でお茶をした。今から思うと、その当時のわたしにはちょっと背伸びしたデートだったのかもしれない。だって当時は、マクドナルドやミスタードーナツのようなファーストフード店でお友達とおしゃべりを楽しんでいたような時代で、いわゆる喫茶店には足を踏み入れたことすらなかったのである。だからこそ、大人なムードの喫茶店に入ること自体、胸がドキドキする冒険に感じられたのだ。

少し年上のその先輩は色白の文学青年風で、メガネの良く似合う人だった。少し年上なだけなのに、喫茶店やコーヒーがそう感じさせたのだろうか、先輩はひどく大人びて見えたものだ。その喫茶店で先輩が頼んだのはブラックコーヒー、わたしも真似してブラックコーヒーを試してみたけれど、やっぱり苦い。結局はブラックコーヒーで飲むことができなくて、ミルクをたっぷり入れて飲むことになった。そんなわたしを先輩は、まだまだ子供だなと言って軽くおでこをつついた。どうってことないできごとなのだけれど、先輩に子ども扱いされたようでもやもやした気持ちになった。子ども扱いされたのは不服だったけれど、なんだか友達以上恋人未満なようで複雑な気分だった。
そんな甘酸っぱい初恋の季節が過ぎてゆき、十分大人といえる年齢になったわたしは、普通にブラックコーヒーが飲めるようになっていた。スターバックスに行けば、フラペチーノも頼むことはあるのだけれど、昔のわたしだったら考えられなかったことに、ミルクや砂糖が入ったコーヒーの方が苦手になってしまっていた。何が変わったのかは具体的にはわからないけれど、大人になったということだったのかもしれない。

 

そんな頃つき合っていた彼には、妻子があった。向こうも本気ではなかったのだと思うけれど、遊び慣れているような人ではなかった。でも、結婚してから彼女ができたのは初めてのことだったのだと思う。だから、彼も妻以外に彼女のいる状況に少し舞い上がっていたのだろうか、最初熱心に口説いてきたのは、彼の方だった。当初は彼に妻子があることには気が付かなかったのだけれども、なぜだかわたしも始めから、本気になるつもりはなかった。本気になるつもりはなかったのに、つき合いがずるずる続き、気付いたら数年経過してしまっていた。第三者からしたら、不倫の関係なんて貴重な時間の浪費だし、不毛な関係を続けることは無意味だと思うことだろう。

不倫の関係にはよくあることだけれど、会える時間はただいたいが平日の夜、しかも夜明けを共に過ごすことなく相手は妻子の待つ家に帰っていく。たまに一緒に旅行に出かけたり、外でデートもするけれど、なんとなく肩身の狭い、陰のある関係になってしまうのではないだろうか。ご多聞に漏れず、わたしも彼とはそんな関係だった。そんな関係にいつしか疲弊し、かといって、新しい恋に飛び込むことに臆病になっていたわたしは、だんだんとその不毛な関係に固執するようになってしまっていた。それまでは何とも思わなかったのに、夜中に妻子のもとへ帰る彼の背中を見るのが辛くなってきていた。本当は夜明けのモーニングコーヒーを一緒に飲みたかったのに、でも、そんな言葉をついに彼に向けて言うことはなかった。彼が帰った後のひんやりとした部屋で、一人でコーヒーを飲む。いろいろな思いが頭の中をぐるぐる回って、いつもだったらコーヒーを飲んだら頭が整理されるはずなのに、かえって混乱してくる。やっぱり、わたしおかしくなっているのかもしれない、とやるせない気持ちになった。ふと気づいたら、冷めたコーヒーの入ったマグカップを握りしめたまま、涙がこぼれていた。

 

ちょうど潮時だったのだと思う。これ以上不毛な関係を続けることにもほとほと疲れていたし、彼との未来がないことは頭の中では十分にわかっていたのだから。端的に言ってしまえば、わたしとの関係に飽きてきた彼からの連絡も途絶えがちになり、たまに思い出したように連絡も来たけれど、ある日、私はこんな関係に終止符を打つことを決意した。別れを切り出したのは、私からだった。コーヒーの良い香りが鼻腔をくすぐり、別れの言葉を口にしたわたしに、彼は動揺していた。その姿を見て、自分の決断が正しいように思った。その日飲んだコーヒーの味は、ほろ苦かったけど、後味がすっきりしていて、次の恋に進もうというわたしを応援してくれているかのようだった。
新しい彼に出会ったとき、わたしは恋愛モードではなかったかもしれない。仕事なり趣味なり、他に一所懸命になっていることがあった時だったのではないだろうか。だからこそ、肩の力が抜けた自然体で次の関係に踏み出せたのだと思う。

新しい彼は、奥さんと離婚したばかりではあったけど、独身だった。前の不倫の関係のときには考えられなかったけど、平日の夜だけではなく、休日や祝日、あるいは日中、家で彼の帰りを待つ家族のことを気にしないでいられる、時間の制約のないつき合いはとても新鮮だった。何か特別なことをするわけではないけれど、そんな陰の存在ではない、堂々と外を腕を組んだりして歩ける関係がこんなにも心地よいものだったとは、そんな普通のことがそれこそその当時のわたしにとっては目からウロコ、いちいち新鮮な感動だった。

そんなつき合いが続き、彼の家にお泊りした翌朝のことである。コーヒーの良い香りが漂ってきて、目が覚めた。コーヒーメーカーがコーヒーを入れている、ドリップ音がリズムを刻んでいて心地よい。おはようと言って、彼がコーヒーの入ったマグカップを手渡してくれた。少し香りを楽しんでから、一口含むと、体のすみずみまでコーヒーがいきわたるかのように感じられた。それは、コーヒーのおかげもあるけど、彼の愛情がそう思わせたのかもしれない。そんなささやかなことにも幸せを感じられる、彼との関係はとても心地よいものだった。

それからしばらくして、彼とわたしは結婚した。

結婚する前は、結婚することで何かが変わるとは思っていなかったのだけど、実際に結婚してみると、いろいろと変わることもあることに気づかされる。確かに、恋愛当時のような激しい熱情のようなものはないかもしれないけれど、熱情が穏やかな愛情にかわり、その穏やかな愛情によって日々が支えられているような気がする。コーヒーもだけれど、そこにあるのが当たり前のようなそんな存在、彼と家族になったということなのかもしれない。

とはいっても、いつも居心地の良い関係でいられるわけではない。もちろん、ケンカだってする。ケンカの原因は、後から考えてみてもよく思い出せないくらいの些細なことなのだけれど。たまにそんなケンカをして、そんなケンカが長引くこともある。早く仲直りしちゃえば良いとは思っていても、ついつい意地を張ってしまって、なかなか仲直りのチャンスがやってこない。そんなときは、お互い意地っ張りになってしまっているのだろう。一緒にいるのがいたたまれないように感じて同じ空間にいることを避けてみたり、事務的なこと以外はおしゃべりしない不自然な時間が過ぎてゆく。そんな居心地の悪い空間にどちらからともなく耐えかねて、とてもくだらないことを話し出す。プッとお互いに噴き出したりして今までの居心地の悪さが嘘のように、急転直下の仲直り。なぜだかはわからないけれども、仲直りの後は決まって二人でコーヒーを飲む。ミルでコーヒーの豆を挽き、その音と香りが徐々に二人の心を満たしていく。コーヒーメーカーをセットして、後はコーヒーができるのを待つだけ。ドリップ音に耳を澄まし、ケンカのときとは違う静寂が二人を包んでいるのだけれども、それはとても居心地の良い静寂で、その静寂に身をゆだねているのも気持ちよく感じられる。結婚祝いに知人からいただいた、とっておきのカップ&ソーサーを温めて、後はコーヒーを注ぐだけ。

さっきはごめんね、とどちらからともなく謝って、二人で仲良くコーヒーを味わっていると、幸せな気持ちで満たされてくる。きっとこれからもけんかはすると思うけれど、どんなときも二人でコーヒーおいしいね、と言い合えるように、穏やかな愛情が続いていくように努力しようと、仲直りのコーヒーに誓った。

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あなたを確かめる方法

池袋駅から徒歩5分にある珈琲自慢の喫茶店。
そこが彼と私の集合場所。

カロンコロンと今時珍しいベルを鳴らしながら、店内に入る。
辺りを見渡し、すぐに艶のある黒髪の彼が見つかる。
「お待たせ」
笑顔で彼の向かいに座るといつもと変わらないほほえみと声色で「待ってないよ」と言う。でも彼のコーヒーカップはシミだけ残して空。
いつもそうだ。彼は早めに着きすぎる。
でも珈琲と一人の時間が好きな彼はその空間を楽しんでいるので、
確かに私を「待って」はいなかったのかもしれない。

私はアールグレイのストレートを注文する。
彼は「ブルーマウンテンください」と言う。私はそれを聞いて嬉しくなる。
今日は相当ご機嫌なようだ。

感情の起伏が激しい私とは正反対に彼は何を考えているか本当にわからない。
いつも凪のように揺れることがない。
表情も話し方もしぐさも、前回会った時と、いや前々回会った時も前々々回会った時とも
・・・とにかくいつも同じなのだ。
嬉しいのか、楽しいのか、怒っているのか、それどころか「本当に私のこと好きなの?」と不安になるくらい。彼の気持ちはわかりずらい。「外見上」は。

でも私は発見したのだ。
彼は機嫌がいいとブルーマウンテンを頼む。
不機嫌な時はキリマンジェロ。
普通の時はマンデリン。
まぁその他にも細かく珈琲の種類ごとに異なったニュアンスを表すのだが
どちらにしても今日はブルーマウンテンだから彼は「機嫌がいい」ということ。
きっと何かいいことがあったに違いない。
それを私に話してくれるかくれないかはさて置き、彼にいい事があったのなら
それだけで私もハッピーだ。

彼と出会ったのは今から1年前。
当時の私は彼氏に振られて身も心もボロボロだった。
合コンに行っても気がそぞろで楽しめないし、お酒を飲むとくだを巻き二日酔。友人や後輩を捕まえては失恋話を永遠と語り、アドバイスをもらうと「でも」「あなたにはわからない」とタチが悪い。明けても暮れても振られた彼氏のことばかり考えて、本当にどうしようもなかった。

ある休日、気を紛らわせるために池袋をぶらつき、本屋に入った。
女性雑誌を立ち読みし終わり、はぁとため息をついて店内を見渡す。
店内の女性を見ては「あの人は結婚してるのかな・・・」「彼氏がいるのかな・・・」とどうでもいい事を考え、心を曇らせた。
女性雑誌の隣には女性タレント達の書籍コーナー、その隣はアイドルの写真集コーナー、その隣にはやけにピンクやハートのパッケージが多い女性向けの自己啓発本コーナーがある。
「彼をとりこにする方法」「いい女は朝が早い」「女の本音」、どちらかと言うとこういう類の本を馬鹿にしがちな私だがつい「元彼の気持ちを取り戻す!」というタイトルが目に付き、こそこそと周りを気にしながら思わず本を手に取ってしまった。今思い出しても恥ずかしい。
しかし私はプライドだけは高い女なので「いやいや」とその本を戻し、すこし悩んで一個上の段に陳列してある「元カレを忘れるために」という本を手に取る。

結局10分間くらい2つのタイトルの間を手がさまよい、私は一つの本を抱えてレジに向かった。
たかが本・・・いつもの私だったらそう嘲笑うが、完全に失恋の悲しみに溺れていたため藁にすがってしまったのだ。

「カバーはおつけ『カバーつけてください!』
「かしこまりました」

会計を終えると、罪悪感と達成感が混じりなんとも言えない気持ちになった。
この本が参考になるかならないかは別にして、とりあえずぽっかり隙間が空いてしまった時間を「本を読む」という作業が埋めてくれそうな気がした。
よしと振り向き歩き出そうとすると、後ろから直進していた歩行者とぶつかってしまった。相手は少しよろめいて手荷物を落としただけだったようだが、私は振り向いた遠心力をそのまま反動にして盛大に崩れ落ちた。
すいません、と言いながら自らのバッグと先ほど購入した本をかき集める。相手の落とした手荷物に目をやると、どうやら同じ本屋から出てきたようだ。
薄茶糸のビニールの中に本が入っている。私はそれを拾うと、相手に手渡しもう一度「すいませんでした」と言う。
立ち上がって初めて相手の顔を見ると、彼は小柄な男性で、ジーパンに黒のセーター、チェックのシャツの襟を出したいかにもな文学青年だった。

彼は優しく「いいえ、こちらこそ」と言い、頭を下げその場を去っていった。
その瞬間ふわっとコーヒーの苦くて香ばしい香りが鼻をくすぐった。
反射的に職場で仕事もしないでコーヒーばかり飲んでいる上司の顔がよぎってしまい、明日は仕事かとゾッとした。
彼はもう人込みの中で小さな姿になっていたが、なんとなく気まずいのでしっかり距離を保ちながら進んだ。信号待ちにひっかかると、彼の姿は見えなくなった。
手からぶらさげている本に目をやると、カバーがついてない。
ぎょっとして手に取ると、私でも知っている有名な作家のハードカバー本だった・・・
ということは彼が持っていったのは私の・・・。

信号が青になる前に駆け足で飛び出し、群衆をかき分け彼の姿を探す。
駅に入られたら終わりだ。駅前をキョロキョロしていると横断歩道を渡る彼が見える。
大通りから外れた薄暗い路地に入ったところで彼に追いつく。
「すいません!!」
私、この人に何回すいませんって言うんだろう、そんなことを思いつつ叫ぶ。
振り向いた彼に続けて言う。
「それ、逆になってて、それ私ので」息を切らせて話すまとまりのない言葉の羅列。
「あぁ」彼はびっくりもしなければ笑いもせず、
「気づきませんでした。お返しします。」と優しくビニール袋を差し出す。
気付かなかったということは、私が何の本を買ったかしらないということ、
見られてないんだ!
「よかった~~~~~」つい安堵の声が漏れてしまう。
それを聞いて彼がさらに優しく言った。
「そんなに大切な本なんですね」
「え、いや・・・」
「本が好きなんですね」
「ま、あ・・・」
「僕もです。それは誰の作品でしょうか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
どうしよう。答えなくてもいいよね。
でもこの人、すごい良い人なのに、なんか答えないで帰ったら感じ悪くない?
「誰のとかじゃなくて」
間。
なんか辛くなってきた。私は本屋に入ってからというもの、ずっとハラハラしている。
疲れた。もういいや。
「これです」
カバーをはずして彼の目の前に突きつける。
『元カレを忘れるために』
自分でもなんかおかしくなってしまってへら~と顔が崩れて笑顔になる。
彼はタイトルをみた後、私の笑顔と見比べて、かすれた短い笑い声出した。
その声を聞いて、人に笑われたことで、私の心がパッと軽くなった。

不思議だ。
私は私の心の傷に夢中だったけど、たかが長い人生の小話程度のもの。
よくある、たかが失恋。急にそう思えた。
すごいぞ。『元カレを忘れるために』!
「色々大変でしたね。ここでお茶でも飲みませんか」
「色々」とは、彼にぶつかってこけてここまで走ってきたことを言ってるのか。
それとも失恋のことを言ってるのか。

気が付けば立ち話しているのは珈琲店の前だった。
認識したとたんに珈琲のいい匂いがしてくる。

その時も彼は今日と同じブルーマウンテンを飲んでいた。

1年経ち、恋人になった今もこの珈琲店に私たちはいる。

仕事の話、彼の読んだ本の話、私の友人の話、デートの計画、
今日もいつものようにとりとめのない話をし日が暮れる。

二人連なって駅に向かう。
彼と私は乗る路線が違うので彼が私が乗る線まで送ってくれる。
そしてさっと、去り際におでこに素早くキスをする。
珈琲のにおい。彼のにおい。

大切にそのにおいを抱きしめながら電車に乗る。

「ごめん、今日会えなくなったんだ」彼は申し訳なさそうにスマホの向こう側で言う。
電話の声を聞くと、珈琲のにおいが鮮明に思い出され鼻腔が反応する。
仕方ないね、そう言ってお互い体調を気遣い合う言葉を投げかけ合い、電話を切った。
彼は仕事場で主任になったらしく会議に出張に忙しいらしい。
私は私とて暇なわけではなく、年末にかけてどんどん残業が増えている。
珈琲店でゆっくりする時間はもちろん、デートや連絡を取る回数も徐々に減っていた。

久しぶりに彼に会うと、いつもの変わらない表情の中にどこか疲れが見えた。
「モカを」
「・・・・・。」
「どうしたの?」
珍しいなと思って、と笑顔を作ってはみたが動揺している。
「うん、人に勧められて」
彼の優しい声の中に、なにか冷たさを感じた。
・・・・あぁ、そっか。
これが彼との最後の思い出になった。

珈琲のにおいを嗅ぐ度にため息がでたが、仕事が忙しかったからか前回のようなご乱心ぶりを見せることはなく(この時『元カレを忘れるために』は読まなかった)、淡々と静かな日々が続いていった。

私はその後、支店からの派遣で来た年下の男性と付き合った。
珈琲が飲めない。子供の味覚、いや味覚だけでなく子供の感覚をそのまま持ち合わせて大人になったような人だ。
いつかだったか喫茶店で、なぜ珈琲を飲まないのにそんなに詳しいのだと言われたことがある。
笑ってごまかしたが、私の中には珈琲のにおいとともに彼の記憶が色濃く残っていることを認識した。

私はその男性からプロポーズされ、婚約した。
入籍は6ヶ月後、結婚式は8ヶ月後。これから家族同士の顔合わせや式場選びで忙しくなるだろう。
若干の不安と焦燥感とともに、幸せなせわしなさに胸を高鳴らせる。
左手の指輪を愛おしくさすりながら、待ち合わせ場所に向かう。

幸せな休日。平日はスーツ姿の会社員でまみれる街を家族連れやカップルが華やかに蘇らせる。

足元を小さな女の子が通り抜けた。まだまだ不安定な足取りだ。
「ちょっと!」女性の声、お母さんだろう。
その後お母さんが女の子を追いかけて、私の横を走り抜ける。

男性の笑い声、どこかで聞いたような短い乾いた笑い声が目の前で聞こえる。
そのまますれ違い、すれ違い際にはっきりと珈琲のにおい。
香しくて忘れられない、ちょっぴり苦い珈琲のにおい。

思わず立ちどまる。彼も立ち止まっているだろうか。
こっちを見ているだろうか。
私はよしと振り向かずにそのまま早足で歩き出す。
彼とは反対方向へ向かって。

待ち合わせ場所と幸せな未来へ向かって。

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コーヒーと将来の2人の夢

私は昔はコーヒーがとても苦手でした。
見た目は黒いし苦いし体に悪そうなイメージしかなかったからです。コーヒーよりもオレンジジュースやクリームソーダなどの甘いものが好きだった子供でした。

そんな私でしたが両親がよく小さい頃から喫茶店へ一緒に連れて行ってくれていたので美味しそうにコーヒーを飲みながら談笑している両親の姿をみていると、大人になれば美味しく感じるものなんだろうなーと子供ながらに思っていました。

そんな私はコーヒーは苦手でしたが喫茶店独特の匂いは好きでした。コーヒーの匂いをかぐと大人になった気分になれたので喫茶店にはしょっちゅうついて行っていました。
でもその頃は両親と喫茶店へ行ってもケーキとジュースばかり頼んでいた記憶があります。大人はこのコーヒー美味しい!と嬉しそうに話してたのを覚えていますが興味はありませんでした。

そんな私もコーヒーを飲むようになったのは両親がペンションに連れて行ってくれたのがきっかけでした。大学生になり紅茶が好きでよく紅茶を飲んでいましたが、そこのペンションには紅茶はなくコーヒーのみだった為、試しにコーヒーを飲んでみたのですが、そのコーヒーがとても美味しかったのを今でも覚えています。

そのコーヒーは少し高価でしたが初めて美味しいコーヒーと出会った瞬間でした。
ここのコーヒーを飲んでからは両親と喫茶店へ行ってもコーヒーも飲むことが増えました。

コーヒーを飲むことが増えていくうちにコーヒーについて研究するようになり、小さい頃は健康に悪そうと思っていたコーヒーも実は意外と健康にいいものだということが分かり、ほぼ毎日コーヒーを飲むようになりました。

コーヒーを飲んでからは便通も良くなりました。集中したい時やちょっとリラックスしたい時などコンビニに行ってコーヒーを買ってみたりすることも増えました。
この頃から本格的にはまりはじめ、両親以外とも喫茶店へ行くことが増えました。

大学に入り成人を迎えるとお酒を飲む機会が増えましたが、お酒よりコーヒーが飲みたいなと思うようになっている自分に驚きました。

友達とおしゃれなカフェでコーヒーを飲んだりする事も自然と増えてきました。
気づいたらカフェ巡りをするようになり1人でもカフェに出向いてはコーヒーの飲み比べをしていました。多いときは1日に3軒まわることもありました。

両親も喫茶店が大好きなので私がコーヒーを飲むようになってからは前よりも良く喫茶店へ連れて行ってくれました。

夜に急にコーヒーが飲みたくなり深夜まで営業をしているコーヒーにかなりこだわりのあるオーナーがいる喫茶店を見つけたので一緒に行ったこともあります。

そのときは濃いめのコーヒーを飲んだせいか胃の調子を崩したのをよく覚えています。美味しかったのですがついついブラックで飲んでしまい夜中のコーヒーに今びっくりしたようでした。
さすがにしばらくはコーヒーを控えていましたが1週間ほどでまたいつものペースで飲んでいました。

自宅でインスタントで飲むこともありましたが、やはりインスタントコーヒーよりも喫茶店でのんびりといつもと違う雰囲気を味わいながら飲むコーヒーは格別でした。

現在もコーヒーをいろんなところで飲んでいますが、私の中のベスト1は昔、両親と一緒に行ったペンションのコーヒーです。残念ながらそのお店は最近閉店となってしまいました。このペンションは遠い所にあった為、一年に2、3回行けたらいい方でなかなか行くことができませんでした。
でもよく来店していたのでお店の方も覚えていてくださりどこのコーヒー豆を使っているのか教えてくださりこのお店で販売してるコーヒーを来店するたびに購入していました。

でも自宅で同じ豆で飲んでみても味が違いました。砂糖やミルクにもこだわっていた店なので自宅で飲むには工夫が必要でした。

このお店が閉店してから幾度となくいろんなカフェに行ってコーヒーを飲んでみましたが
まだまだ納得のいくコーヒーに出会えていないので、今はそこを超えるコーヒーを探しているところですがなかなか見つかりません。

恋人ができたらそのペンションで一緒に美味しいコーヒーを飲もうと思っていました。そのペンションでは貸切で結婚式も挙げることができるのでいつか絶対!と思っていたのでなおさら残念でした。
時々美味しいコーヒーに出会うとこのペンションを思い出します。

そこまでコーヒーが好きになった私は今は同じようにコーヒーが大好きな恋人ができ、喫茶店で3時間のんびりただコーヒーを飲みながら過ごすこともあります。夏場はアイスコーヒーの美味しいお店へわざわざ遠征したり恋人と飲むコーヒーはまた違うように感じました。
恋人にもこのペンションの話をすることがありましたが閉店してることを知ると残念そうにしていました。でもこのペンションの話を共有できて幸せに感じました。

恋人と観光スポットへ行くたびに1回休憩しに喫茶店へ行っていました。
移動してまた違う観光スポットについてはまた喫茶店で休憩する恋人とはとても気が合い、デートの待ち合わせで遅れてきても文句も言わずカフェで待っていてくれたりとお互いコーヒーは切り離せない存在です。
コーヒーの話題も多く一緒にコーヒーを楽しむことができて幸せを感じる日々を過ごせました。
その時一緒にコーヒーを飲んでいた恋人とは数年前に結婚し、今も一緒に変わらずコーヒーを飲みに行っています。というより、以前より飲む回数が増えました。

結婚してからは旦那様がドリップしてくれたコーヒーを飲んだり時間をかけて作ってくれたダッチコーヒーを飲んだりとさらにコーヒーを飲む機会が増えました。
旦那様は私よりもコーヒーへのこだわりが強く私も知らなかったコーヒーミルなどのコーヒーを美味しく飲むための道具を沢山見せてくれました。手引きのミルでコーヒーを飲むととてもコーヒーに愛着が湧きます。
それからはあまりインスタントは飲まなくなりドリップして飲むことが増えました。

今ではお互いが休日の朝は『モーニング行こうか!』が合言葉になっているぐらいお互いコーヒーが好きなので家にもコーヒー豆がかなりストックしてあります。

ちょっと珍しいコーヒーを見つけるとすぐ買ってしまう私ですが、それに対して文句を言われることは一切なく一緒に飲んでくれるので嬉しいです。

そんな私たち夫婦はコーヒー好きなので将来カフェを開きたいね。と話をすることもあります。カフェ巡りをしていると時々、老夫婦の方が定年後に夢だったカフェを夫婦でオープンしたという話を聞くことがあり将来仕事を退職した後、私たちもそんな風に大好きなコーヒーに囲まれてこだわりのコーヒーを提供できたらなと思うようになりました。未だに昔行ったペンションのコーヒーを超えるコーヒーに出会えていないので、それならば自分たちでしてみるのもいいかもと思っています。仕事に疲れた時はカフェに行ってコーヒーの道具や入れ方のスタイル、雰囲気を存分に味わいながら将来のカフェオープンに向けての勉強をしています。

旦那様と結婚し新婚旅行にヨーロッパへ行った時は日本とのコーヒーの感覚が違いまたまた勉強になりました。日本のカフェスタイルも好きですが私たち夫婦はヨーロッパスタイルが気に入ってしまい、今はヨーロッパのカフェについても研究中でお給料のほとんどがコーヒーに消えてるのでは?と思うぐらいコーヒーに貢いでいます(笑)
これは将来の投資になるといいなと思っています。

新婚旅行後に子供を授かりしばらくカフェインは取れないためコーヒーはほとんど飲まないようにしていましたが、時々コーヒーを飲むとすごくら美味しく感じ、リラックス出来ていたので気のせいかコーヒーを飲んだ時はよく胎動を感じました。もしかするとカフェインが悪影響したのかな?と不安に思いましたが、医師に確認するとお母さんがリラックスしてる時は喜んで動いてるのかもねと言われコーヒーも大量でなければ心配ないと言われホッとしたこともあります。

そんな私も母となり子供も少し大きくなってきましたが昔の私のようにコーヒーの匂いをかぐのが好きなようで、コーヒーを飲んでいると近寄ってきて匂いをかぐような様子が見られます。まだ飲ますことはできないので誤飲しないように気をつけていますが、いつか子供がコーヒーを飲めるようになればまたまたコーヒーを飲む機会が増えるだろうなと今から覚悟しています。

あんなにコーヒーが苦手だった私がここまでコーヒーに囲まれる生活になるとは全く思いませんでした。でも今はコーヒーがない生活は考えれません。胃腸炎になっても医師にコーヒー飲みたいと言って注意されたぐらいのカフェイン中毒になってしまったようです(笑)旦那様も水分補給ー!と言いながらコーヒーを飲む人なのでお互い似た者同士だなーと実感します。

そんな2人が将来カフェを開いたらどんなコーヒーを提供できるのか想像するとワクワクするのと不安が入り混じっています。
コーヒーだけでなく器や雰囲気、一緒に出すお菓子等も勉強しないとなと感じています。
今はまだ漠然とした夢ですが、これから数十年先の未来に期待しながら今はコーヒーを楽しむ毎日を過ごしたいです。

今ではコーヒーを飲む時間は旦那様とのかけがえのない憩いの時間となっています。
それと同時に将来に向けてのコーヒーの勉強の時間を共有する時間でもあります。将来、こだわりのコーヒーショップ経営できるといいなと思っています☆
そして子供がコーヒー好きになって私たち夫婦が経営する喫茶店にバイトで入ってもらってたまにしかったりしながらも楽しい生活を送れたらいいなと思っています。

コーヒー嫌いだった私がコーヒー好きに転心しコーヒー好きの旦那様と一緒にコーヒーショップを経営できる日が来ることを願いつつ、あの時のペンションのコーヒーの感動を味わいたいがためにカフェ巡りも継続したいと思います。

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ブラックはお好きですか

大学に入って4年目だ。理系の学部を選んだ僕は、大学院に進学するかいまも悩んでいる。
所属している都市基盤工学の研究室にも10月に入って、3回生の後輩が3人入ってきた。これで院生の先輩を入れると8人の大所帯だ。
新しい後輩の3人のうち、2人は女性だ。一人は眼鏡をかけて黒髪が綺麗な色白の長身。少し口調がきついが、ゼミでの的を射た発言に感心している。
もうひとりの女性ははっきり言って、やんちゃだ。言っちゃ悪いが、お世辞にも勉強ができそうには見えない。
この大学にはAO入試という筆記試験を経ないで入学できる制度がある。親が建築士であったり、役所で土木関係の職に就いていたりすると、それを理由に申し込みをして面接だけで入学してくる場合がある。勝手な推測だが、彼女もそういったところだろうか。

 

でも僕は彼女に恋をしている。
そんなことを考えながら、総武線中野駅から自宅アパートまでの帰り道に金色の缶コーヒーを買った。もう冷たいコーヒーは今年最後かな。僕は頭の中の彼女の映像を消して呟いた。
11月に入って、大学構内の木々も紅色に色づいてきた。先週のゼミの帰り、今週末に研究室で紅葉狩りに行くことが決まった。場所は箱根。
彼女と大学以外で会うのはこれが初めてになる。

僕は彼女にヨウさんと呼ばれている。僕の本名福田陽太郎から陽をとるからヨウさんだ。
僕は彼女を苗字で呼んでいる。生嶋さん。他のゼミ生もそう呼んでいるからそうだ。

「ヨウさんは、箱根に紅葉、なんて、毎年彼女と行っていますよね?」
旅行の前日の金曜日、研究室では生嶋さんと僕と院生が2人。生嶋さんが僕をまたからかってくる。
「そんなことないよ。箱根に紅葉を観にいくのは小学生のときに行った家族旅行以来かな~。」

僕は大学4年生にもなって、まだ彼女がいない。正確に言うと、女性がアパートに泊りにくることはよくある。でもその相手の全てが、それ以上を求めない。
そして僕も彼女にそれ以上の話をしない。都合のいい関係と言えばそれまでだが、それ以上にこういう関係を続けてきた僕の心の闇は、案外深いのかもしれない。
箱根で手を繋ぎながら生嶋さんと2人で歩くところを想像する。紅葉以上に紅く染まる生嶋さんの頬がかわいい。

「え~!嘘つきだ~!この前中野駅でヨウさんと経済学部の前田さんが2人で歩いているところ私見ましたよ!」

生嶋さんの声は高い。キンキン響く。前田さんと中野駅にいたから、箱根に前田さんと2人で行くこととは全く論理的に関係がないのだが、彼女もそれはわかったうえで僕にふっかけてきているのだろう。

「うわ~。見られていたのか~。サークルの帰り道が一緒だったから。帰っただけだよ。」
「その割には仲よさそうでしたけどね。」
「それより生嶋さんも社会人の彼氏さんだっけ。都内なのに車で迎えにきてくれるってすごいね。」

 

そうだ。彼女には社会人の彼氏がいるのだ。うちの大学の同じ学部からいわゆる五大コンサルのひとつと言われている大手企業に就職した僕より6つ上の先輩。当然話したことはないが、生嶋さんを迎えに大学前に赤いフェアレディを停めるから、大学では一躍有名人である。

「ふーん。」

急に彼女に勢いがなくなる。

「あ!レポートを出し忘れていた!ごめん!」
僕はそういって、研究室をあとにした。

 
月曜日だ。週末の紅葉狩りは楽しかった。あることを除けば。
土曜日は、滝を囲むようにして、一面が紅葉色に染まる景色が楽しめるところに、茶屋があり、そこでお昼ご飯を食べた。何の工夫もなさそうなうどんをみんな頼んで食べた。食後のコーヒーはどこの豆だったのだろう。エスプレッソではなく、粗く挽いた豆のスッキリした酸味が特徴的だった。
そしてなぜか生嶋さんが泣いていた。
滝の水がゴーとした音を立てながら、生嶋さんのすすり泣く、美しい高い声を打ち消すようにして流れていた。

もう秋も深い。

僕は彼女の涙の理由がわからなかった。同期の2人が彼女に向かって身体を丸めながら何か声をかけていた。

なぜ僕はいつも肝心なときに誰かを守れないのだろう。僕はそのとき、一口分しか残っていないコーヒーに四角い砂糖を入れて銀色のスプーンでかき混ぜながらそんなことを考えていた。
彼女は研究室に来なかった。次の火曜日も。金曜日のゼミも休んだ。
赤いフェアレディもここ最近みていない。彼女は大学に来ているのだろうか。彼女は彼氏と別れたのだと同期から聞いた。
少し肌寒くなってきた。コートに手を入れながら中野駅からの帰り道に設置されている自動販売機をみてみると、缶コーヒーの押しボタンの上は赤色で「あったかい」と印字されていた。冬はもうすぐそこまで来ている。
土曜日。卒業論文の内容を修正するため、僕は大学にきていた。
休日だからというわけではないが、研究室には院生も誰もいない。
正午を過ぎた。やりたかった内容もほとんど完成した。久しぶりに文庫本でも研究室で読もうかな。
僕は、そんなことを考えながら、研究室の隅にあるシンクで給湯器に水を入れてお湯を沸かした。
院生が趣味でこだわっているコーヒー豆を手にとって、匂いを嗅いでみた。少し甘い匂い。
エチオピアの深煎りにしよう。僕はそう思って、豆をスプーンにとって、ミルに入れていた。10グラム、20グラム・・・

突然、ドアが開く。
「こんにちは。」
か細い高い声。顔を上げた。生嶋さんだ。
彼女は素顔に近い顔で、どこかいつもより幼くみえる。正直に言ってかわいい。
「どうしたの?休日に。」
ミルに入れた豆を削りながら彼女に声をかける。
「あ、 、いや。そのなんでもないです。失礼しました!」
突然、彼女が部屋を出て駆け出す。
「あ、いやちょっと待って!」
僕はミルを置いて、彼女を追いかける。

なんで僕は彼女を追いかけたのだろう。
よくわからない。

彼女の手をつかむ。細くて長い、綺麗な腕。
彼女が僕をちらっとみる。
「ちょっと!落ち着いていきなよ。」
よくわからない言葉を彼女にかけた。僕の頭の中には何も計画がない。
彼女は少しうなずいてそれから研究室に一緒に入った。
僕の机の上に読もうとした文庫本が中開きで置いてある。彼女も僕もしばらく何も言わなかった。
「ねえ。コーヒー飲む?少し多めに作っちゃったのだけど。」
「うん。いただきます。」
うん。不意に彼女から漏れでた、ため口に心が和む。僕は彼女が好きなのだな。
彼女が白いマグカップに口をつけて一口飲む。
「おいしい。」
彼女が僕を見ずに一言つぶやく。僕は彼女がブラックで良かったのか聞くのを忘れていたことに気付いた。
彼女はそんな僕を察したかのようにもう一口とカップに口を付ける。

「ねえ。明日また箱根行こうか。」「ふたりで。」
僕は彼女にそう言った。

彼女は驚いた表情を見せたあと、口元を釣り上げて、僕をみてコクと頷いた。

僕には赤いフェアレディはない。とびっきり秀でた容姿も頭脳もない。
ずっと好きだと見下してきた彼女に、なぜだか僕にないもの、何もかも全て、彼女がもっているかのようにみえた。
コーヒーの香りは飲み終わったあとも部屋に充満していた。
僕たちは窓からはいる西日を浴びて、抱きしめあって口づけをした。
柔らかい唇に少しコーヒーの香りがした。部屋の中の香りだったのかもしれない。しかしそんなことはどうでもよかった。
その日は二人で帰った。
それから彼女はうちに泊まった。
中野駅からの帰り道にあるいつもの自動販売機は、夜道を健気に照らしていた。
自販機を通りすぎた頃、彼女は僕にこう言った。
「ヨウちゃん。私も帰り道が一緒だったからこうやって一緒にいるの?」
僕は笑ってこう答える。
「生嶋の家は世田谷だろ。」
そういうと彼女は、僕に頭を寄せたかと思うと走って後ろに去ってしまう。
慌てて僕が彼女を目で追うと、彼女は自動販売機の前に立っていた。
そして缶コーヒーを2本、手にもって、かけ戻ってくる。
「ヨウちゃんは冷たいの~」
「馬鹿!何で!」

僕は生嶋が好きだ。初めて声に出してこの言葉を言える気がする。君に。
あれから何週間が過ぎただろう。
都内のいたるところには、色とりどりの電球が装飾され、クリスマスを前に街中の人までもが輝いてみえる。生嶋と歩く渋谷は、イルミネーションのせいか、いつもより視界が明るくみえる。この何週間かで僕は彼女について、いくつかのことを知った。彼女の家庭は裕福で、世田谷の自宅は一軒家で、隣には父親が自営している建設会社の事務所が隣接されていた。従業員の数は10人を超えているといった。彼女の父にも何度か会った。もちろん初めて会ったときは少し緊張した。なぜか僕は、手土産のひとつも持っていかなかったが、彼女の父は怪訝な顔ひとつせずに僕を迎えてくれた。

今日はそんな彼女の父に、彼女とクリスマスプレゼントを買いにきた。いや、そのはずだった。
渋谷駅のハチ公口を出て、原宿方面に歩を進めていると、見たことのある赤いフェアレディ―が前に停まった。小さくクラクションが鳴ったかと思うと、それから中から男性がでてきた。

「美代!探したぞ!」
生嶋に向かってフェアレディから出てきた男性が叫ぶ。

生嶋は名前が美代という。生嶋美代だ。

「何よ!急に!」
彼女が男性に向かってあの高い声で返す。僕が握っていた彼女の手はもうそこにはない。

「美代!もうアイツとは話を着けた。俺とやり直してくれ。」

何秒時が流れたのだろうか。生嶋美代の目には涙が浮かんでいた。何故だ。僕には何もわからなかった。生嶋美代は僕に何かを言っていた。それから赤いフェアレディの男性も僕に何かを言っていた。そして二人はなぜかフェアレディに乗って去っていった。
生嶋美代がフェアレディに乗る6つ上の先輩に見せた剣幕を僕は一度もみたことがなかった。生嶋美代が助手席に座るとき、お尻を上げて左手でさする仕草を見せるなんてこと知る由もなかった。僕は生嶋美代を何も知らなかった。

道玄坂のコーヒー店でコーヒーフラペチーノを頼んで、持ち帰った。僕は、本当は苦いのよりも甘い方が好きなのだ。

恋もコーヒーも。

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コーヒーレター

大好きなアンへ

毎朝、美味しいコーヒーをありがとう。
僕だけのために入れたアンのコーヒーが、世界で一番美味しいよ。
これからも毎朝、アンが入れた美味しいコーヒーを味わいたいです。
アン、僕だけのために、そしてこれから増える家族のためにも、末長くよろしくお願いします。

アンが入れたコーヒーは、ピカピカに磨かれたテーブルの上で、いつも僕を待っています。
そのテーブルには、透明な小瓶が一つありますね。その中には、タンポポの花が飾られています。あれは、アンがお店の帰り道に、路地裏で摘んできたタンポポだと、僕は知っています。それに、どの路地裏かも知っています。

アンと僕が初めて出会った日のことを覚えていますか。僕は覚えています。
アンも覚えているはずです。
それは、7年前でしたね。アンが26歳、僕が46歳でした。
アンは、アンのお母さんが経営する飲食店で、ランチを作っていました。その時、僕が食べた初めてのアンの料理は、牛肉のハンバーグでした。最高に美味しかったです。ランチ後のコーヒーは、強い酸味とコクのあるモカでした。

アンは、目が大きく、鼻筋が通って、小顔な容顔美麗な女性です。心は、高原の水のように無色透明で、温かさと優しさを持った美人さんです。そのアンを僕は、別の男に取られることを心配していた。このことを、アンは知っていましたか。だから、一緒に生活するようになってからも、今日は誰と話したかチェックするようにしていたのです。でもアンは、一度、私のことが信じられないのと怒ったことがありましたね。僕は、その時からチェックはしなかったが、その不安だけは、今でも消えないです。

僕はアンに一目惚れをしたのです。20歳も年下のアンに。

それから、僕は週に2回、アンが作るランチを食べに行きました。会社から、歩いて5分のところでしたから。でも、僕は、アンのお店に行くときは独りでした。それは、会社の同僚にアンのことを見せたくなかったからです。でも、後でアンから、僕の同僚のことを聞かされ驚きました。しかし、アンが僕を探す時に、その同僚の協力があったからと聞き、僕は、少し人を信じる気持ちになりました。

僕は、アンに会うために、2年間お店に通いました。そして、いつからか、ランチ後のコーヒーは、アンが決めていましたね、あれから僕の飲むコーヒーの種類は、アンが決めることになったのですね。ある時は、マイルドコーヒーと呼ばれるコロンビアだったり、上品な口あたりのクリスタルマウンテンだったりしましたね。でも、僕はアンが入れたモカが一番好きでした。
この2年間の中で、2度ほど、夜にアンのお店でお酒を飲みに行きました。アンは覚えていますか。
その時、アンは、お店にあるピアノを弾いてくれましたね。1曲だけ。曲は「エリーゼのため」でした。あの時、お母さんは、僕にアンがお店でピアノを弾くのは、初めてだと教えてくれました。お母さんは、アンの気持ちを知っていたのですね。僕は、鈍感なので、その意味が理解できませんでした。その時、アンは僕にキリマンジャロを出してくらましたね。あの酸味は、今でも覚えています。
それに、アンが音大出身で、ピアニストを目指していたことを、その時初めて知りました。しかし、アンがピアニストになっていたら、僕と出会い生活することはなったと思い、その夢に僕は嫉妬しました。この日は、アンのお母さんが、ブールーマウンテンを、僕のために出してくれました。

アンと僕との二人の生活は、5年前から始まりましたね。僕がアンの部屋に転がり込んだと、チェロを弾くケンさんがよく話してました。その時、アンは笑うだけで、本当のことを話してくれませんでしたね。
本当は、アンが僕をアンの部屋に連れて行ったのですよね。5年前に。いつか、チェロ弾きのケンさんに話してください。
二人の生活は、僕の病気の看病から始まったのですね。アンは絶対に忘れないですよね。僕も忘れたいです。
その病気は、僕が仕事からのストレスと異常なほどの残業で、気分障害というわかりづらいものでした。僕は、それが原因で会社を解雇になりました。
あの時、僕は死ぬつもりでした。それを止めたのは、アンでした。そしてアンは
僕の部屋に突然現れ、布団の中からアンは僕を無理やり引っ張り出した。
僕はパジャマを着た状態で、アンの車に乗せられ、30分ほどでアンの部屋に連行されました。その晩、アンは、牛肉のハンバーグを出してくれましたね。食後のコーヒーは、モカでした。その時、アンが好きなコーヒーがモカだと教えてくれました。僕は、あの晩、アンが寝た後、独りで泣いていました。心が温かくなったからです。

それから、二人の生活が始まりました。
アンの部屋で初めての朝食は、ご飯と味噌汁の和食でした。おかずは、アジのひらきと納豆でした。食後のコーヒーは、和食に合うキリマンジャロでしたね。アンが、決めたのです。あれは、アンがお母さんのお店から持ち出したコーヒーでした。でも、とても温かく優しい味がして、美味しかったです。

僕は、その当時、いつかアンに捨てられのではないかと、不安な気持ちにもなりました。しかし、アンは、お母さんのお店と買い物をする商店街以外の時間は、必ず部屋にいてくれましたね。僕は、そのアンの気持ちで、病気からくる不安と恐怖から逃れることができたのです。心の底から、感謝しています。

アンは、ピンクのカーテンを花柄の黄色いカーテンにかえましたね。あれは、どうしてですか。僕が男だかですか。それとも別の意味があるのですか。
いつか、アンに尋ねようかと思い、今では5年も月日が流れてました。
リビングのテーブルは、お母さんの家から頂いたものですね。かなり高級なテーブルと聞いています。だから、アンは1日に何度も磨いてましたね。いつも、ピカピカでした。だから、毎朝、アンがテーブルに出すコーヒーがさらに引き立つのですね。なぜか、芸術的な香りがしてきます。僕には、そのようなセンスはありません。アンと生活ができて、僕は幸せです。

アンと僕の部屋にスマイルくんが来たのは、3年前ですね。スマイルくんは、アンの30歳の誕生日にお母さんからのプレゼントでしたね。犬種は、ヨークシャーテリアでした。まだ、生後1ヶ月の可愛い子犬でした。アンは、犬が大好きであると、僕はその時知りました。今では、ヤンチャなスマイルくんですが。
僕は、生まれて初めて犬のいる生活をおくりましたが、今ではアンの影響でしょうか。犬好きになりました。

スマイルくんが、アンの部屋にきてから、二人で散歩に出かけました。毘沙門天がある長い長い坂を、商店街の中を歩きました。アンが生まれ育った街です。
平日も休日も関係なく人がたくさん歩いてましたね。スマイルくんは、その人混みに慣れるまで、時間がかかりましたね。子犬の頃は、可愛いワンちゃんと言われ人集りになりましたが、大きくなると人集りは少なくなりました。そして、毎朝、アンが決めた豆で入れたコーヒーを飲んでいるときは、スマイルくんが二人に気を使い、リビングの端で寝ていましたね。僕は、毎日、そんなスマイルくんに感謝していました。

アンと僕との生活が始まり4年目の秋に、アンのお腹に新しい命が送られてきました。そのとき、僕は嬉しさのあまりに、アンが入れてくれたコーヒーをこぼしてしまったのを、覚えていますか。そして、あのとき、スマイルくんが落ち込んでいたのを知っていますか。あの日、僕がこぼしたコーヒーはモカでした。
いつもアンは、記念日にモカを選んでいました。それは、二人が大好きなコーヒー豆だったからですね。その日の夜は。牛肉のハンバーグでした。これが、記念日の決まりでした。

アンは新しい命が送られてきてから、お母さんのお店で料理を作るのをやめました。だから、僕が代わりに、お母さんのお店を手伝うことになりました。初めの頃は、僕が辞めた会社の同僚が来ると思い辛かったです。しかし、その会社は、別の場所に引っ越しをしていたので、誰にも会うことはなかっのです。安心して、手伝うことができました。
お母さんがアンの代わりに厨房で料理を作っていました。常連さんは、ママの作る料理も美味しいねと言っていましたが、正直、アンの方が数倍、美味しかったです。あと、僕がアンの旦那さんと知った常連さんからは、クレームがたくさんありました。僕は、そのとき、自慢したかったですが、笑顔で返しただけで、それ以上は、話さなかったです。でも、自慢をしたかったです。

二人に新しい命が現実となって部屋に届いたのは、6ヶ月前でした。この部屋には、アンと僕と太郎とスマイルくんの3人と1匹の生活になりました。本当に幸せが、送られてきました。7年前の僕からは想像もできないことでした。正直、あのとき、アンが迎えに来なかったら、僕は死んでいたはずです。だから、僕のこの命は、アンだけのものです。太郎が、部屋にきたときに飲んだコーヒーは。やはりモカでした。

今年の春、アンが体調を崩したとき、僕は嫌な感がしたのです。いつも元気なアンが、2週間も寝込んだのですから。心配になったので、お母さんに連絡して一緒に病院に連れて行ってもらいました。その結果、血液の癌と診断され、今の医学ではと医師に言われたとお母さんから聞かされたときは、僕は目の前が真っ暗になりました。このときは、神様を信じることができなくなりました。
この日から、朝のコーヒーの種類を決めるのが僕になりました。

僕は、毎日、アンの病室にコーヒーを届けに行きました。僕が決めた銘柄で。
アンのお母さんが、アンが好きなコーヒーはキリマンジャロと、そのとき、初めて知りました。アンは、僕に合わせてモカが好きだと言ったのですね。
それから、3ヶ月の間、僕は毎日、キリマンジャロを病室に届けました。アンは日々、体が衰弱していきました。君が意識がなくなっても、僕はキリマンジャロを病室に届けました。

今、アンの部屋で、太郎とスマイルくんの二人と1匹で暮らしています。アンは、この手紙を、空の上で読んでいることでしょう。
次にアンに会うときは。君の好きなコーヒー、モカを持っていきます。
安らかにお眠りください。アンありがとう。
僕と太郎とスマイルより

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異性にモテたいならコーヒーを飲むべし

コーヒーを飲む人はリア充が多いことが分かりました。
数多くのコーヒーメーカーを製造しているデロンギ・ジャパン株式会社が、全国に住むコーヒー好きの30歳~50歳までの男女400人に対して「コーヒーとライフスタイル調査」と銘打って、プライベートな調査が行われました。
コーヒーにこだわりが強い人たちの多くは、年収の上昇や恋愛も順調、生活の充実度も高い傾向にあることが分かりました。
◎コーヒーにこだわりが「かなりある」と答えた人の25%の直近3年間の収入は100万円以上増えていることがわかりました。なかでもエスプレッソを飲むと答えた人の1割以上が1,000万以上で、ハンドドリップ等の淹れ方をする人と比較しても最も高い割合です。
◎コーヒーを淹れるときにこだわりがあると答えた人の割合は全体の29%の人たちが過去7人以上の異性との交際があることがわかりました。特にエスプレッソを淹れる人の14%が自分のことをモテる傾向にあると答えており、他の淹れ方をする人の倍以上の調査が得られました。
◎エスプレッソを飲むと答えた人は、ファッションへのこだわりも強く、こだわりが「かなりある」、「ある」と答えた人の合計は47%と約半数がファッションへのこだわりが強いことがわかりました。
また、ファッション以外のインテリアでもこだわりが強い傾向がわかっています。
◎エスプレッソを淹れる14%が現在の生活に充実していると答えており、他の淹れ方をしている人たちよりも仕事に対してもかなり前向きに取り組んでいることがわかりました。
また、コーヒーにこだわりを持って飲むようになってからの変化を聞いたところ、エスプレッソを飲むようになってから50%が「自分の時間を大切にするようになった」、44%が「生活が充実し、心が穏やかになった」と答えています。
これらを踏まえると、コーヒーを飲む人、特にエスプレッソを飲む人はライフスタイルが充実していることが分かります。

さらに、「コーヒーとライフスタイル調査第2弾」と銘打って、コーヒーを飲むことが好きな20代~30歳代の彼氏のいる未婚女性500人に対して調査を行いました。
その結果、20代、30代の女性は彼との多くのデートで「おうちデート」と「カフェデート」が多くを占めています。
仕事が忙しい為、アクティブなデートよりも、おうちやカフェでコーヒーを飲みながらゆったり、まったりしたデートが定番になっているようです。
◎彼氏がコーヒーを淹れるシチュエーションを想像したとき、どんな仕草がキュンとするのか聞いたところ、「自分のために豆を挽くところからコーヒーを淹れてくれる」と回答した人は56%と半数以上と多くの人が自分のためにしてくれていることが嬉しいという結果がわかりました。
◎クリスマスにプレゼントしたいものを聞いたところ、自分も彼もコーヒーが大好きな20代女性の45%が「エスプレッソマシン」と答えています。仕事が忙しい現代、「おうちデート」でまったりしたデートが好きな女性たちは、服や時計よりも家で使える「エスプレッソマシン」をプレゼントしたいようです。
◎「エスプレッソ」を飲んでいる男性に対する印象を聞いたところ、「大人らしい」(53%)、「カッコいい」(48%)、「落ち着いた」(40%)といった印象を持つようです。
その理由として、「コーヒーの本当のおいしさが分かってる気がするから」、「苦味があり濃いコーヒーを飲む男性は大人でおしゃれなイメージがあるから」、「自分が飲めないような苦味のあるコーヒーを飲んでいるとカッコよく感じるから」等が挙がり、苦味のあるエスプレッソは、落ち着いていて大人なおしゃれのイメージがあるようです。

以上の調査は分かったけど、それって個人の感想であって気のせいじゃないの?と思う方も多いと思います。「コーヒーとライフスタイル調査第2弾」は個人の感想ですが、「コーヒーとライフスタイル調査」での調査は個人の感想だけではないことが科学的に証明されています。
ライフスタイルを充実させるには美容や睡眠、脳への効果が重要です。
①シミへの予防効果
コーヒーを飲んでいる人の方がシミは出来にくく、特に1日2杯以上コーヒーを飲む人は、シミの抑制効果が顕著に表れていることが分かりました。
神戸大学名誉教授の市橋正光先生たちのグループが、「コーヒーがシミを予防するメカニズム」を解明しました。コーヒーに含まれるクロロゲン酸というポリフェノール(抗酸化物質)の働きによって、シミの原因となる色素成分のメラニン生成が約3割も抑えられることがわかりました。シミの原因の多くは生活習慣の乱れです。最も成長ホルモンが出るゴールデンタイム(22時~2時)に寝ていない、喫煙をしている、インスタント食品などの加工食品や塩分過多な食事を行っている等、生活習慣の乱れた人(内的要因)と通常の生活を行っている人との比較検討による研究が行われたところ、コーヒーを飲む回数や量とのシミの発生状況との間に因果関係があることがわかりました。
生活習慣の乱れ(内的要因)、紫外線(外的要因)でシミができる時、特に外的要因である紫外線を多く浴びると肌の中では軽い炎症が起きています。シミへの予防効果は、ポリフェノール(抗酸化物質)が重要であることが分かります。
②ストレスを緩和する効果&集中力を高める効果
現代は「ストレス社会」と言われるほど、誰もが精神的な悩みを抱えています。コーヒーを飲むとリラックスができて、ストレスも和らぐという人が多いことは「コーヒーとライフスタイル調査」で分かっています。これを科学的に研究した調査があります。
杏林大学医学部の古賀良彦教授らによる研究で、コーヒーの香りにリラックス作用があることがわかりました。コーヒーの匂いを嗅いだ20代女性10人の脳波の働きを分析したところ、リラックス状態を示す「α派」と、集中力が高まっていることを示す「P300」という脳波のいずれもが、普通より多く出現したのです。
人間の交感神経には、気持ちを高ぶらせる交感神経と気持ちを静めさせる副交感神経があります。いずれの交感神経にもコーヒーを飲むことで作用することが分かります。コーヒーはカフェインが含まれていますので、夜には飲まないように、特に14時までに飲むことで夜の睡眠時まで交感神経が働き、夜になると副交感神経の働きが活性化します。
つまり、コーヒーはリラックス効果と集中力を高める効果があるということです。
③ダイエット効果
コーヒーを飲むと、脂肪燃焼効果があるという報告は多く挙がっています。コーヒーに含まれるカフェイン、クロロゲン酸、ナイアシン等、様々な成分が脂肪燃焼効果に繋がります。
ただし、これには条件があって、砂糖を入れることにより、カフェインが減少してしまうので、コーヒーはノンシュガーで飲むことが大前提です。
便秘解消にも期待出来ます。カフェインは、腸の働きを助け、便通を正常の健康な状態に促してくれます。人間の構造上、午前中は排泄の時間なので、朝に飲むことをおすすめします。
さらに、カフェインは利尿作用があるため、デトックス効果があります。尿から排出される毒素はアンモニウムやカリウム、マグネシウムなどで、身体の余剰分が老廃物として尿から排出されます。老廃物の中でも、特に塩分の主成分であるナトリウムの排出が上手くいかないと、身体がむくんでしまいます。それを予防するためにも、身体に溜め込まないようにすることが大切です。
④脳の働きの活性化効果
コーヒーの香ばしい香りは、「α派」と「P300」という脳波が多く出現すると、②で説明しましたが、快感神経と呼ばれる「A10神経」を刺激する作用があります。「A10神経」を刺激すると、神経伝達物質も沢山分泌され、脳の働きが活発になります。「ドーパミン」と言えばわかる人も多いでしょう。ドーパミンが活発になるとやる気が出て行動力が上がる、創造的な発想ができる等、仕事にも大きく効果が発揮できるでしょう。
また、ドーパミンは、別名で恋愛ホルモンと呼ばれ、相手を喜ばせたくなったり、興奮状態になるので瞳孔が大きくなり、目力アップ、頬もピンクになるので女性には嬉しい効果が期待されます。

以上の効果が私たちのライフスタイルを充実させてくれます。ライフスタイルを充実させることによって、「コーヒーとライフスタイル調査」でのコーヒーを飲む人の個人の感想は科学的に実証されていると言えるでしょう。

コーヒーは、科学的にライフスタイルを充実させることを上記で説明しましたが、注意点がいくつかあります。
1.インスタントよりもドリップするべし
インスタントコーヒーよりもドリップしたコーヒーの方が、美容効果や睡眠効果があるカフェイン含有量が2倍のため、ドリップして飲んだ方が良いでしょう。「コーヒーとライフスタイル調査第2弾」で20代~30代の女性は彼氏と家でまったりしたデートを好み、エスプレッソマシンがあると大人で落ち着いたおしゃれな男のイメージがあるようなので、落ち着いた大人の男に見られたい男性はエスプレッソマシンを常備しておくと良いでしょう。
2.アイスよりもホットで飲むべし
コーヒーを飲む際は、ホットとアイスがありますが、コーヒーの効果を最大限発揮させたいのならホットコーヒーを飲みましょう。体内に入ったコーヒーから、美容効果のあるカフェインやクロロゲン酸を効率的に吸収させるには消化酵素の働きが大切で、酵素の効果を最大限発揮するには、体温と同じ35℃~40℃が適切です。
3.食前に飲むべし
クロロゲン酸の効果を最大限発揮するには、食前に飲んで腸へクロロゲン酸を先回りさせておくことが大事です。脂肪燃焼効果はもちろんのこと、血糖値を急激に上げて太りにくい食事をすることが出来ます。また、カフェインの効果によって食事抑制効果があるため、食事量を減らす効果も期待できます。
4.14時までに飲むべし
カフェインは、交感神経を活性化させるため、日中の交感神経が優位な状態で飲む分には最高の効果を期待できます。しかし、副交感神経が優位になる夕方以降に飲むと睡眠障害になり、質の良い睡眠が出来にくくなるため、14時(日中)までに飲むことをおすすめします。

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コーヒーの苦さと恋情の居心地

大学1年生になって、やっと喫茶店に一緒に行ってくれるようになった片想いの彼だった。
「小林さんは、この後どうするの?」聞いているのは男性でなく、女性である私の方だった。高校1年生の時に好きになってから、ずっと淡い想いを抱いていた。
しかし、「うん、本屋に寄って帰るかな。」何とも脈のない答えである。
いつも避けられているように感じ、友達としてはいてくれる釣れない人に恋をしている悲しさが募る。
「そうか。」としか言えない私が悪いのか、『行かないで。私といてくれないかな。』と言わせてくれない彼が悪いのかはわからないが、振り向いてもらえない分の切なさが残る。
そんな時に、「お待たせ致しました。」とマスターが淹れてくれたコーヒーの苦さが丁度よく感じてしまう。
こんなにも人を好きになった事はないし、この人が私を見てくれるのならどんな事でもやってのける自信はあるのに、嫌な携帯の着信が響いて、

「先に帰るね。」
と言った彼を当たり前のように見送る自分が寂しかった。その孤独な心を包むように温かいコーヒーが私を癒してくれる。
このコーヒーを飲むようになったのも彼に好かれる為だった。ダイエットに効くと聞いたからでもある。痩せて綺麗になれば、好きになってもらえるかもしれないとおこがましいような気持ちでいっぱいだった。
何故か、好きでもない人からは、沢山モテる。

『早坂さん、付き合ってくれませんか。』

その言葉を初めて耳にした時、彼が近くにいたから、『どう思う?』と聞いた。案の定、『やめといた方がいいよ。』と言ってくれたので少しは私に興味があるのかと勘違いし、喜んだのがこの恋の自惚れの始まりだった。彼は、私が好きだった訳ではなく、本当にその男性に対して良い印象を持っていなかったから断れと言っただけ。
私への執着など1mmも無かったのだと思い知ったのは、『デートしてくれないかな?』と誘ってしまった後の事だった。反応が悪かったので、『痩せたら、映画に行ってくれないかな。』と頼み込んだが、『ダイエットは体に悪いから、やめた方がいいよ。』と遠回しに断られただけだった。
友達としてしか見られていない現実に失望してしまい、諦めて違う男性と映画に行ったが虚しいだけだった。その後に飲んだブラックコーヒーの味は、何もしなかった。
一緒にいる相手が違うだけでこんなにも全てがどうでもよくなるのかと暗い気持ちで帰宅した。その間にもずっと彼の事を考えながら、想ってもくれないとハッキリわかっているその人の事だけしか頭には入って来なかった。
勿論、進学校だったので勉強も頑張ったし、『早坂さん、よくやったね。』『今回は国語と社会が学年3位よ。』とこっそり担任や副担任の先生に誉めてもらって、満面の笑みにはなれたが、それが欲しかった訳じゃない。私が欲しかったのは、彼の気持ちだけだった。どんなに努力しても、手を伸ばしても藻掻き苦しめば苦しむ程、手に入らない。虚しさが募って、1年また1年と時が経ってしまった。
その間にも、バレンタインデーにはチョコレートを渡し、誕生日にはおめでとうメールを送り、一緒に帰ってくれる事もあったが、この人は私のモノではないのだとわかっているのが切なかった。
『好きだよ』と言って返してくれる人を好きにはなれない。そんな自分も我が儘だったのだと思う。それでも、どうしてもこの執着からは逃れられなかった。
誰に間違っている、やめておきなよと言われても、私にはこの人しかいなかった。
バカかもしれない。泣ける程に、好きだった。
でも、我慢も2年半を過ぎると痛みにしかならなくなった。自分勝手な想いだが、周りに彼氏ができたり、幸せそうな雰囲気が漂うのを見ると辛く感じる事が多くなってきた。奥手な友人がいて安心していた訳でもないのだが、その子にまで彼氏ができて1人ぼっちになったようで悲しかった。
一緒に帰る人もいなくなって、寂しく教室にいたら、「一緒に帰ろう。」と声をかけてくれたのは彼だった。

帰りながら、こんな事を尋ねていいのかと疑問に思ったが、どうしても気になる事があったので聞いてみた。

「彩ちゃんと付き合ってるの?」と確認してしまった。付き合っていたとしたら、生きてはいられないくらい精神が崩壊するだろうとわかっていたのに、聞いてしまった。もう遅いと思って、自分の行動に嫌気が差した。
しかし、「付き合ってないよ。俺は、今まで誰とも付き合った事がない。」と冗談のような笑顔が目に入った。「可愛いって言ってたよね?」と言ったら、「確かに綺麗な子だけど、性格が合わなかった。」と言われた。ほっとして、物凄く幸せな気分になった。
でも、卒業間近の友人達とのボーリング大会の時に、「早坂君と葉子ちゃんは付き合っているから、私達は見守って2人きりにしてあげよう。」と友人に言われた。心臓が潰れたような、目の前が真っ暗になったかのような絶望感と自分の大切なモノを奪われたような喪失感に苛まれた。
友人達に聞くと、付き合っていると口々に言われて、雰囲気を壊さない程度に明るく場を盛り上げてからトイレで1人泣いた。
自分が養って鳥籠に囲ってもいいと思える程、好きだった。最悪、私を好きじゃなくても彼がいてくれれば強くなれると思えるくらい、この気持ちは一途で愚かだった。
泣いて目を腫らして夜の闇に消えていると後ろから彼氏持ちの友人の声がした。
「コーヒー、飲みに行こうよ!美味しいとこ、知ってるから。」と誘ってくれた。「うん。」と笑い、付いて行ったコーヒー店は本格的なエスプレッソの匂いがしてとてもいい香りだった。
それなのに、注文したのは、薄いブラックのアメリカンで、泣き過ぎたのか味がよくわからなかった。彼と来たかった等と思って、また泣きそうになった。
残念ながら、精神的に不安定だった私は、成績を落とし、彼と同じ大学には行けなかった。笑える話だが、失恋で鬱病にかかり、授業中に寝てしまったりして受験生のクラスメイト達に嫌われてしまった。

「また寝てるよ。早坂さんは何の為に学校に来てるの?」と言われる始末だ。『そんなの、彼に会う為だけに来てるに決まってる』と言える訳もなかったが、報われない意地にも似た執念が私を離してはくれなかった。
教師も苦笑いするしかない程、「私は、1人競技に出るから。それはできない。」と協調性を無くし、やつれていった。
だから、高校3年になって別人のように人に好かれなくなった。
彼以外は、いらないのでどうでもよかった。それだけだったのだが、要らぬ誤解を招いた。
「早坂さんって、援助交際してるらしいよ。」「可愛くもないのに。」等とやってもいない罪を被せられても全く気にする余裕も無かった。バカみたいに彼の事だけにしがみつこうとしていた。
彼は繊細でか弱い人間だったから、そんな私を良くは思ってくれなかった。きっと、人柄が良くて精神的に強く朗らかな女性がタイプだという事もわかっている。
その時の心境は、鬱病で弱っていく私をあなたが好きにならなくてよかったと言うものだった。本当に好きだったから、守ってあげられないくらい体がふらふらな自分が彼を幸せにしてあげる自信が無くなったのだ。守って欲しいなんて、愛して欲しいなんて言わないから、こっちを見て欲しい。それだけなのに、何故伝わらないんだろう、まるでトレンディー俳優の3枚目のような自分が悲しくて仕方なかった。
抱き締めてくれる腕を望んでいる訳じゃないのにここまで叶わないなんて、と現実に追い込まれる毎日だった。
卒業して、彼が側にいなくなると少し心が落ち着いたように思えた。お互いの為に彼の連絡先も消して、総てを忘れたように大学生活を送った。
友人も沢山できて、無理矢理他の人を好きになる努力もしたし、彼氏もできた。
入学3か月後、彼の番号から携帯に連絡が入ってしまった。

「出ていいよ。」
と新しく出会った男性に言われたが、1日中無視をしてその日は出なかった。私が無視をしたのも初めてだし、彼がこんなにしつこくかけて来た事も今までに無かった。

「秀実ちゃん、どうしたの?」

と彼氏に聞かれて、はっとしてしまうくらいには気が動転していた。「ううん。最近、オレオレ詐欺が携帯にまで掛かって来るらしいよ。自分の携帯で自分に掛かって来るのに、本人を装ってお金を請求して来るって。凄いよね。」「最早、執念やな。」と誤魔化しながら会話をした。早く何か喋らなければと慌てていると、友人の言っていた台詞が口をついた。
癖になったアメリカンのブラックコーヒーを飲みながら、美味しさを感じられるくらいには立ち直れたと思う。2度と近寄らないでおこうと決意した。
その筈だったのに、お盆に帰省した彼に偶然出会ってしまった。顔を見ると、もうダメだった。他の人まで彼の顔に見える。3か月では気持ちがどうにもならなかったのかもしれない。爽やかに、変わらぬ笑顔で、

「早坂さん!」

と言われてしまえば、飼い犬みたいに、「久し振り、小林君!」と嬉しそうな態度を取ってしまった。彼に興味を抱かれない原因がそこである事もわかっているのに、無下にできない。惚れている側なのだと、いつもいつも認識させられる。
それは喜びであり、悲哀でもある。

「新しくオープンした喫茶店に行かない?」なんて、男性から言ってもらう言葉を彼よりも先に発してしまう。
「守らなければと言う心構えが間違っている。お母ちゃんじゃないんだから。女の子はしてもらうように持って行った方がいいよ。」と言ってくれた女友達のアドバイスもこの時の私には通じていなかった。
レディファーストのように、彼が困らないように知らない場所を案内してあげるし、ナイトのように彼の犠牲になってもいいと思えるくらい、好きだったからだ。彼の手を煩わせたくない、その一心だった。色んな店を案内してあげたり、楽しんでくれているかを気にしたり、女と言う性別を捨ててもよかった。
彼といられる事の幸せで、してあげる事に何の違和感も抱かなくなっていた。
もしかしたら、彼はしてあげたかったのかもしれない。そう思えるようになったのは、帰って来る度にしつこくコーヒー店にデートに誘って1年が過ぎた頃だった。
私はプレゼントでも何でも本人の欲しい物ではなく、自分が欲しい物をあげるタイプだった。
でも、相手からしてみると、「いや、男物の方が良かった。」と言われる事が多い。「でも、これ、可愛いのはし。」と批判精神が強い上に我を通す癖があったのだ。
付き合っていた人にも、付き合い切れないとフラれてしまった。
しかし、彼に相談する気にもなれず、いつものように彼の家まで迎えに行って一緒にコーヒーを飲んでいたら、
「はい、どうぞ。」と彼が扉を開けてくれた。嬉しくて世界一幸福であると言える自信があった。コーヒーも合わせてみて、少しは見栄を張らずに女性らしく振る舞っていた。すると、「映画に行かない?」とあちらからお声が掛かって、思考が停止した。それまで、コーヒーがこんなに美味しい物だとわからなかった。
ただ飲んでいるだけ、雰囲気のような物だったのだが、28歳になって大好きな彼と暮らせるようになってからは、「先生、プロフィール書いて。後で渡してくれたら、いいから。」「わかった。ちょっと待っててね。」と、教職に就いた私の生徒のプロフィール帳にある大好物の欄に『アメリカン』の名が記されている。

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二人の大きいコーヒーカップ

冷えきった空気の中、白い息を吐きながら車のドアを閉め、僕は彼女と待ち合わせた喫茶店に入って行った。決まった席に目をやり、歩きながら彼女に向かって片手を軽く上げた。少し前に店に入っていると連絡があったから、彼女の方が先に待ってくれているのはわかっていた。ひとつ年上の彼女は、白いカップを両手で包み込むように持ったままこちらを見ていた。僕が席に着くと、お互いに「お疲れ」と笑顔で言った。熱い飲み物が苦手な彼女は、両手で持ったカップに息を吹きかけて少し冷めるのを待つ。彼女には言ってないが、僕はその仕草が気に入っていた。
二人はデート代を給料日に出し合い、一緒に選んだブランドの長財布に入れていた。いつか二人で旅行に行こうと、デート代とは別に専用の僕名義の通帳を作って預金もしていた。ドライブで遠くに行ったり、記念日に美味しい物を食べたり、二人で話し合ってやり繰りしていた。彼女の先輩が結婚前にそうしていたと知り、どちらからともなく同じようにしようということになった。でも、給料日が近づくと残りが少なくなるので、この喫茶店で過ごすことが多かった。一杯ずつのコーヒーだけど、この店のコーヒーカップは大きくて美味しい僕好みのコーヒーがたっぷり入っていて二人とも気に入っていた。長居しても違和感はなく、落ち着いた雰囲気の内装で、仕事終わりのこの時間はお客がまばらでくつろぎ易かった。常連のような頻度で通ってないが、この店のスタッフは客の顔を覚えるのが早く、今は席に着くとブラックコーヒーが出てくるようになった。ミルクティーと間違えるくらいきめ細かい泡がブラックコーヒーの表面を覆っていて、置いたままのカップに僕が息をかけると泡がくるくると回るのを彼女は見て笑った。付き合い始めはコーヒーが飲めなかった彼女だけど、僕が飲むと美味しそうだと真似して頼むようになり、今では僕と同じように席に着くとコーヒーがで出てくるようになった。ミルクと砂糖をたっぷり入れる彼女のコーヒーも美味しそうで、時々交換して飲むこともあった。焙煎したばかりの香りを楽しみながら、一日の出来事を直接会って顔を見て話せるだけで満足だった。お互いのことをあまり知らない頃は、家族や友人の話が多かったけど、一年くらい経つと少し先の話をするようになった。
カラオケとジェットコースターが苦手な共通点を持つ僕たちは、安心してお互いが勧める場所に出掛けた。公園でバトミントンをした時や給料日前の休日には、彼女が弁当を作って持ってきてくれたので、食べ物や味の好みも合っているとわかった。そして、デートの度にさよならをして別々の家に帰るのが切なくて、もっと一緒にいられたらと何度も思うようになった。なんとなく聞いたら、彼女も同じことを考えているようだった。僕は就職したばかりで、「結婚」という文字は全く頭に無かった。けど、もっと長い時間、彼女と一緒にいたいと素直に感じていた。

 

しかし、少しでも長く一緒にいたいと思い始めた時、彼女がよそよそしくなっているのに気付いた。他に好きな人でもできたのだろうか、何か他に原因があるだろうかと不安になり真剣に考えたけど全くわからなかった。コーヒーを飲む間ずっと気まずい雰囲気だった日、会計を終えて店を出てそれぞれの車に向かう途中で、彼女が立ち止まって僕の方を怖い顔で見ながら、突然「別れてあげてもいいよ」と小さな声だけどはっきりと言った。僕は予想していない言葉が耳に飛び込んできたので、驚いて何も言えなかった。まるで僕が別れたいと望んでいるみたいで理解ができなくて、この状況を解決に導く自信がなかった。黙って地面を見つめて考えていると、彼女は自分の車に乗り込んでエンジン音とともに駐車場を出て行った。さっきまで暖かい店内で熱いコーヒーを飲んで温まった身体はすっかり冷めてしまったけど、そんなことはどうでもよかった。さっき、彼女が発した言葉や表情ばかりが繰り返し浮かんでくる。運転に集中できないから、道路脇に車を止めてシートを倒して目を閉じた。

 

いくら考えてもわからないけど、彼女に直接会って理由を聞く度胸もない。どうしたら誤解が解けるだろうか、それから帰宅して風呂に入ってからも考え続けた。彼女がよそよそしくなった頃の会話ってどんなだっただろと思い出したけど、将来のことを冗談っぽく話したり、次の旅行先のことだったりを話したことくらいしか覚えてない。一緒に住めたら楽しいだろうねと僕が話した時、彼女は嬉しそうに笑っていて嫌そうには見えなかった。何がいけなかったのか、自分ではさっぱりわからなかった。

連絡がないまま一週間が経った。こんなことは付き合って初めてのことだった。仕事から帰宅してぼんやりと携帯の待ち受け画面を見ていると、幼馴染から着信が表示された。「久しぶりに会わないか?」と近所の喫茶店に誘われたので、他に用事がない僕はすぐに支度をして出掛けた。今まで彼女がいなかった僕は、友人達から付き合っている彼女の愚痴を聞かされるのが嫌だった。だから、絶対に自分に彼女ができたら愚痴は言わないと決めていた。待ち合わせの喫茶店に入ると、ジャケットを脱いで座りかけている友人を見つけた。「久しぶり」と声を掛けて向かい側に座り、注文を取りに来た店員に一緒にコーヒーを頼んだ。
店員がいなくなるとすぐに「どうした、元気ないな」と言われた。幼馴染だからわかるのか、そんなに元気のない顔をしているのか自分ではわからなかった。愚痴ではないが話さないと決めていたのに、話の流れで一週間前の出来事を説明した。今まで聞く側でわからなかったけど、こんな時は誰かに話して意見を聞きたくなるものだと初めて知った自分に少し笑えた。笑いそうになったけど、幼馴染に失礼なので堪える事にした。でも、大きな声で笑ったのは幼馴染の方で、コーヒーを運んでくれた店員の女性もつられて笑った。彼は「そりゃあ彼女が怒るのは当たり前だ」と砂糖とミルクを入れながらこちらを見ずに言った。僕は熱いブラックコーヒーを一口飲んで、よくわかるように説明してほしいと頼んだ。説明が聞きたいのになぜか「結婚する気はあるのか?」と聞かれ、僕は更に混乱した。結婚なんて考えてなかったと正直に言うと、うなずきながら楽しそうに笑う彼を見て、根拠はないけど解決してくれそうな気がした。結婚も考えてないのに一緒に住みたいと何度も話したら、それは女性なら誰でも怒り出すに決まっているだろと簡単な解説をしてくれた。就職したばかりで結婚について考えていなかったことと、少しでも長く一緒にいたいと願うことは矛盾していたらしい。一緒にいたいからと結婚をするのは自然だけど、君とは結婚しないで同棲だけしたいと伝えているみたいで、僕の言動は無責任で身勝手と受け止められても仕方がないらしい。

 

幼馴染が説明してくれた通りのことを彼女が考えていたとしたら、今すぐにでも飛んで行って誤解を解きたいと思った。残りのコーヒーを味わう余裕が無くなった僕に、幼馴染が「結婚すれば」と軽く言った。そう言われて戸惑いながら、「ちょっと考えるわ」と答えるのが精一杯だった。

 

結婚は簡単に決めることじゃない。しっかり者で気が合う女性と将来について話し合い、家族に紹介して時間を掛けて決めて行くものだと思い込んでいた。でも、彼女が僕の奥さんになってくれるとしたら、食事の好みも経済観念も似ているし、何より一緒にいて楽しい理想の相手に違いなかった。彼女のような女性にもう出会える気がしなかった。幼馴染のひとことは軽い気持ちで出た言葉じゃなくて、本心から出たものだったのかもしれないと思った。重要な決断をするには軽い感じだったけど、気付かせてくれて背中を押してくれたから感謝しなくちゃいけない。怒った彼女の顔が浮かび、時間がないと焦った。指輪を買いに行くにしてもサイズを知らないし、何処で買ったらいいのかさえわからなかった。とりあえず彼女に電話をして、一方的にいつもの喫茶店に来てほしいと伝えて切った。彼女は来てくれるだろうか、こんなにあっさりと結婚を決めていいのだろうか、こんな時はネガティブなことばかり考えてしまう。先にコーヒーの匂いが立ち込める店内に入り、いつもの席に座った。今日、僕はきちんと気持ちを打ち明けて、彼女に謝ろう。そして、これからもずっと一緒にいてほしいと伝えよう。そしたら、彼女はどんな顔をするだろうか、いつも通り両手でカップを持って笑ってくれるだろうかとドキドキしながら熱いコーヒーをすすって待っていた。すると、誰かが店のドアを開ける音がして、聞きなれた彼女の靴音が近づいて来た。幼馴染に近々会わせると約束した彼女が僕の席へ向かっている。

 

彼女はすぐに連絡を取り合っていなかった時のことを、何事も無かったかのように話し始めた。けど、僕は真面目な話があるからと彼女の話を遮った。そして、うつむいてしまった彼女が顔を上げるのを待ち、一呼吸おいて「結婚しよう」と単刀直入に言った。言った僕が驚いたくらい、店内の時間が静かに止まったような感覚になった。彼女は僕から視線を逸らしてまたうつむいたので、僕もうつむいてしまった。自分の鼓動がこんなに大きいなんて知らなかった。また短い間にネガティブな思想に襲われた。少し顔を上げて見てみると、彼女の長い髪が邪魔をして表情がわからないけど、うつむいたまま泣いているみたいだった。コーヒーが運ばれてきたので、彼女のカップの近くにミルクを寄せた。泣かせてしまった罪悪感で、僕も泣きたい気分だった。コーヒーの味までなぜか今日は苦くて、責められている気分だった。こんな時でも癖は出てしまうもので、コーヒーの表面に息をかけると泡がくるくると回った。その時、顔を上げた彼女が僕のカップを見て笑った。目の前で涙を浮かべながら笑う彼女の顔を見て、絶対にこの人と結婚しようと思った。ドラマだと「よろしくお願いします」と返事がありそうなものだけど、笑顔だけで充分だった。僕は、ミルクと砂糖をたっぷり入れたコーヒーを飲む彼女の顔を、結婚したら毎朝見られるのかと思うと胸が苦しくなった。彼女が朝食を作ってくれる間に、僕は毎朝コーヒーを作ろう。

 

両手でカップを持つ彼女を見たいから、カップはこの店と同じ白くて大きいのを選ぼう。時々はこの店にも来ると思うけど、もうその時は一緒の家に帰ることができる。さっきまで店内の時間が止まったような感覚だったけど、今は店に入った時より照明が明るくなったように思えた。やっぱり仲良く一緒に飲むコーヒーは美味しい。婚約者に名前を変えた彼女と僕は、残りのコーヒーをゆっくり味わいながら飲んだ。

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