タイ北部のゴールデン・トライアングルで、世界一高価なコーヒーを作っていることをご存知でしょうか。
ゴールデン・トライアングルとは、タイ、ミャンマー、ラオスの3国がメコン川を挟んで接する山岳地帯で、世界最大の麻薬・覚醒剤密造地帯という人身売買も横行するような荒廃した地域でした。
この荒廃した地域を再生すべく、タイ王室により設立されたメイ・ファー・ルアン財団により「ドイトン計画」が1988年に立ち上げられ、ケシの代替作物としてコーヒーやナッツを栽培する支援が始まりました。
その後、順調にプロジェクトが推移した結果、ケシ栽培の99.9%を撲滅することに成功。現在「ドイトンコーヒー」というブランドでタイ国内のみならず、日本でも手軽に入手することができるようになりました。
このゴールデン・トライアングルにある高級リゾートホテル「アナンタラ(Anantara)」では、一杯50ドルのコーヒーを提供しています。一杯50ドルというとてつもなく高価なコーヒーは「ブラック・アイボリー・コーヒー(Black Ivory Coffee)」が提供している「象のフンから採取したコーヒー」です。
2012年10月にブラック・アイボリー・コーヒーを創設した、カナダ人のブレーク・ディンキン氏は、象の保護とコーヒービジネスを組み合わせた事業に最適な土地と判断し、ゴールデン・トライアングルの地でプロジェクトを開始しました。
ディンキン氏は、当初ジャコウネコやライオン、キリンなどを候補として考えていたものの、象は乾季のときにコーヒーを食べる習性があると知り、最終的に象に決めたそうです。
象の餌として、タイ産のアラビカ種のコーヒーチェリー(コーヒーの実の部分)とハーブや果物も同時に与えることにより、象の胃の中でコーヒーチェリーがマリネのように漬け込まれ15時間から70時間かけて消化、排泄されます。
カナダ・グエルフ大学のマルコーネ博士の研究により、象の消化プロセスで消化酵素がタンパク質を分解することでコーヒーの苦味成分を大幅に減少させるということが分かりました。
コピ・ルアックで有名なジャコウネコなどの肉食動物とは対照的に草食動物である象は、消化の過程で発酵作用が強く働き、自然発酵が長時間行われることで、コーヒー豆に果物やハーブなどの香りが絶妙に移ります。
1キログラムのコーヒー豆を生産するためには、果物などの通常の餌と33キログラムのコーヒーチェリーを必要とします。
象のフンから手摘みにより採取されたコーヒーチェリーは、洗浄・天日干し乾燥のプロセスを経てコーヒー豆に加工されます。
このように高額な原料コストと手間暇をかけて作られたコーヒー豆は、1キログラムあたり約1900ドル(1ドル120円として約23万円)で取り引きされています。コピ・ルアックが100グラムあたり4000円から8000円という値段と比べても飛び抜けた値段で、世界一高価なコーヒーといえます。
コーヒーの味は、キャラメルとチョコレートのフレーバーを感じるまったく苦味のない独特な味ということです。ブラック・アイボリー・コーヒーは、直接サイトから購入できますが、Amazonからでも購入可能です。
送料込みで、コーヒー豆35グラムのパックが約1万円で販売されています。
コメント