コーヒーと本と秘密のダンジョン

私はいわゆるアラサー女性なのですが、恥ずかしながら最近までコーヒーがほとんど飲めず、友人のカフェ巡りに付き合っているうちにようやく飲めるようになったのです(それまではもっぱらココアでした)。

そんな私にはちょっとした憧れがあります。
それは喫茶店の常連になり、そこで読書すること。
しかもチェーン店ではないお店で。

すでにそのような生活をされている方にとっては、ごくごく普通のことなのだとは思います。
しかしカフェ初心者で、かつ、小心者の私にとっては「混んで来たかな…早くお店出た方がいいかな…」と思ってしまいます。
特にチェーン店だとそのソワソワした感じが増すのです。

しかしこんな私にも理想のお店があります。
「喫茶店の常連、読書」と聞くと私はある小説を思い浮かべてしまい、「こんなお店の常連になりたいな」と思いを馳せるのです。

それは岡崎琢磨著『珈琲店タレーランの事件簿』、今流行りの小難しくないライトなミステリーです。
宝島社文庫から『このミステリーがすごい!』大賞の人気シリーズとして第4巻まで出版されています。(2016年1月現在)
前置きが長くなりましたが、ここではこの物語の魅力を紹介したいと思います。

この物語の舞台は京都にある、隠れ家的珈琲店「タレーラン」です。
美人のバリスタが営む小さなお店に、主人公の青年アオヤマがとあるきっかけでそのお店を訪れるところから始まります。
美人バリスタ、切間美星が小さな珈琲店「タレーラン」を営む傍ら、お店に舞い込む日常の謎をその聡明な頭脳で解き明かすのです。

探偵役を務める彼女はシリーズを通して愛らしい姿が表紙に描かれています。
発売当初、この作品を初めて知った人の中で、音楽CDでいうところの「ジャケ買い」をしてしまった人もいるのではないでしょうか。(そういう私もその中のひとりです)。

さて、その美貌やバリスタとしての実力もさることながら、彼女の一番の魅力はなんといっても推理力。ミルでいい香りを立てながら彼女はちょちょいと謎解きをしてしまいます。
決め台詞は「その謎、大変よく挽けました」。バリスタらしい一言ですね。

彼女の名推理をそばで見守るのが主人公アオヤマ。彼もコーヒーに関する仕事に従事しています。
コーヒーに詳しくない人でもこれは気になってしまうところがあります。
そう、名前です。
切間(きりま)に、アオヤマ。
キリマンジャロにブルーマウンテン…。まさにコーヒーを連想させますね。
作者の遊び心が表れているポイントの一つです。
きっとコーヒーに詳しい人がみれば、さらにクスッとできる箇所があると思います。

コーヒーに関する知識が随所にちりばめられ、「こんな珈琲店に行ってみたい」と思わせてくれる本作。
若い男女が主役なわけですから、当然のように良い感じの雰囲気にもなります。
冊数を重ねるごとに二人の仲が急接近したり、でも離れたり。
なかなか甘くなってくれない、このじれったい感じはほろ苦さもあります。
そこはコーヒーのお話ですから。それでちょうど良いのかもしれませんね。

前述しましたが、謎解きの舞台となる小さな珈琲店「タレーラン」は京都にあります。
京都といえば喫茶店が多いことで有名です。
その背景としては近くに大学が多く、教授や学生などの安息地となりやすいのではないかと推察されます。
このような土地柄の背景も織り交ぜながら話が展開していくことを受けてか、第一回京都本大賞という賞を受賞しています。
いつか京都に行くことがあるならば、再読してから臨みたいという思いです。

ちなみに、峠比呂氏が作画を担当してコミックにもなっているようなので、小説よりもサクッと読みたい方は漫画版でどうぞ。こちらは同じく2016年1月現在で2巻まで発売されています。
気になった方はぜひ読んでみてください。
さて、この物語に出てくる「タレーラン」が私の理想のお店と言いましたが、実は最近、私の地元・仙台でもお気に入りと言えるお店を見つけたのです。

考えてみれば仙台は喫茶店の多い京都とそう遠くない環境です。
会社員はもちろん、市街地の学校に通う学生が帰宅途中に寄り道しやすく、また隠れ家にしやすい路地も多いのです。
杜の都というくらいですから、街中でさえも木々が眺められ、まさに読書をするのにはうってつけの街だったのです。
なぜもっと早く気が付かなかったのか、自分でも不思議でなりません。

ちなみに私の隠れ家カフェは、一見お店へと続く道の入口が分かりません。
初めて行ったときは「ここ違うお店の入口じゃないの?」と思ってしまいました。
看板も出ている時の方が少ないのではないかと思うほど、レアな存在です。
そんな入口をくぐって、RPGの地下ダンジョンを思わせる小道を通り抜けると、スタジオジブリの世界に来たような、ひと昔前の雰囲気をもつ路地裏の行き止まりに出ます。
そこにも木々が生い茂っており、その木に沿うように延びる階段を昇っていくと、ようやくお店にたどり着くのです。
まるで木の上の秘密基地にやってきたようでした。

店内はコンクリート打ちっぱなしで、ナチュラルな木のテーブルとイスがゆったりと配置された、とてもシンプルな内装です。
窓を向いて座る一人掛けの席もあるため、まさに読書するための環境といっても過言ではありません。
もちろん飲み物・食事ともに味は申し分ありません。

…ここまで書いていたら、また行きたくなってしまいました。
「喫茶店の常連になり、そこで読書すること」という憧れを実現するためにも、まず常連になってきますね。
夜が明けたら行ってきます。
秘密のダンジョン、開いてるといいな。

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