古い長屋が並ぶ中崎町のメイン通りから少し離れたところにある、もなか珈琲。控えめに出された看板がなければそこが喫茶店だと気づかないくらいに、さりげなく街の風景に溶け込んでいます。しかし、通の人はよく知っています。あまりわかりやすいとは言いにくい場所にありながらも、お店には美味しいコーヒーを求めるお客さんがやってきます。
入り口のドアを開けると、4人がけのテーブル席が3つとカウンター席が5つ。シンプルモダンというのでしょうか、ミニマムな調度が空間を広く感じさせます。薄いグラスに入ったお冷とともにメニューを運んでくれるマスター。エプロンにはコーヒーマイスターの称号を示すバッジが光っています。
コーヒーはもちろんのこと、このもなか珈琲で出してくださるお冷のお水が実に美味しいのです。お冷をいただきながらメニューの冊子をめくり、注文を決めて冊子を閉じるとタイミングよくマスターがオーダーを取りに来てくれました。この気配り目配りに感激してしまいます。
定番のブレンドは「花」「鳥」「風」「月」の4種類があるそうで、ブレンドの他にその時期に入荷している豆が2〜3種類、ストレートで提供されています。メニューにそれぞれの味の特徴を説明したものが併記されていますが、マスターに自分の好みの味を伝えてどれがよさそうか相談してみるのもおすすめです。
オーダーごとに丁寧にドリップされ、オールドノリタケのカップになみなみと注がれてサーブされたコーヒーを一口。透明な味、というと味がないみたいですが、豆のコクや甘み、苦味、酸味など特徴はしっかりと感じられつつ雑味がなくて、口の中には心地の良い香りと味が余韻となって残ります。
コーヒーだけでなくスイーツやフードメニューも秀逸。こだわり派のマスターが研究に研究を重ね、味見しすぎて一時嫌いになってしまったほどとの逸話もあるキーマカレー。雑誌のカレー特集に掲載され(コーヒーのお店なのに!)「本格派」だと高い評価を得た人気のメニューです。定番のポークキーマカレーを中心に、しばしば期間限定的にほうれん草とチーズを使ったキーマカレーになったり、チキンカレーが登場したりします。
カレールウは使用せず、味付けは塩のみ。マスター自ら調合した10種類ほどのスパイスと、お肉、そして野菜だけで作られたカレーは旨味が凝縮されていて、添えられたご飯とともに口に運ぶとあまりの美味しさに唸ってしまいます。しっかりとした味なのにとても軽やかなので、もう本当にするすると入ってしまいます。
これまたマスター自ら炊いたペシャメルソースと自慢のカレーが乗ったカレークロックムッシュもまた絶品です。自分好みの味のバランスのものが市販のものには見つからないので…と、わざわざカレークロックムッシュのためだけに炊いているというペシャメルソースはカレー同様軽やかで、カレーの味をいっそう濃厚に際立たせているように感じます。そして、それらを乗せている食パンは、同じ中崎町の名店ブーランジェリー・エス・カガワの天然酵母食パン。美味しいものに美味しいものが合わさって、なんという贅沢なのでしょうか。
コーヒーに合うものを追究するあまり、お店で出すスイーツまでもご自分でつくるようになったとのこと。日によってメニューが変わることがありますが、チーズケーキやガトーショコラが「コーヒーとマッチしていてすごく美味しい」と人気です。
また、夏場のおすすめはコーヒーゼリー。コーヒーゼリーの概念が変わると言っても言い過ぎではないかもしれません。もなか珈琲のコーヒーゼリーは3層になっています。グラスの底には細かくクラッシュしたコーヒーゼリー。その上にコーヒーのグラニテ(凍らせたコーヒーを細かくかき氷状にした感じです)が敷き詰められ、一番上の層にはふんわりとした生クリームが乗っています。
それぞれの食感の違いも楽しいし、一緒に合わせて食べても楽しい。飲むだけでない、コーヒーの味わい方に出会えます。
実直なマスターのこだわりと追究とから繰り出される深い味わいと、マスターのお人柄に魅せられて、足繁く通う常連のお客さんも多いとのこと。美味しく心地の良い時間に思わず長居をしたくなる、また足を運びたくなるお店です。
【店舗情報】
店舗名:もなか珈琲
住所:大阪府大阪市北区中崎3-3-13
電話番号:06-6374-0664
http://monacacoffee.jugem.jp/
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