コーヒーの香〜大好きな人と過ごした時間〜

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香りと人の記憶の関係
人間の五感は視覚、触覚、聴覚、味覚、嗅覚に別れ、それぞれが記憶に繋がるものなのですが、その中でもとりわけ嗅覚は記憶に大きな影響を与えるといわれています。そしてそれは古くからの言い伝えやその人独自の感覚というわけではなく、嗅覚で感じた香りは直接の人の脳に届くもので、他の感覚とはそのルートが違うといわれているためです。

 

その為ある特定の香りを感じた時にその香りと一緒に記憶されていたものがよみがえるというのは多くの人が経験することです。幼い頃に大好きだったおやつの香り、給食の時間になると校舎に漂ってきた美味しそうな香りなどのように食欲と共によみがえる食べ物にまつわる香利の記憶は多くの人が持っていることでしょう。そして香りにまつわる記憶ではたとえば近所にあったガソリンスタンドの前を通ったときの香りが楽しかった学校への道のりを思い出したり、もっとおかしな匂いだと指の傷に貼った絆創膏をはがしたときの臭いや枕カバーの汗臭さを感じる臭いに家族と過ごした幼い日の日常がよみがえったりすることもあります。

 

つまりいい香りだけでなく、特殊なけしていい匂いだとはいえないものにもそれぞれに深く刻まれた記憶が伴っているということです。勿論脳に心地よさを感じる芳香によって思い出される記憶はさらに鮮やかによみがえります。初夏に庭の片隅から漂ってくる沈丁花の香り、秋の初めにほんの短い間に強い芳香を放つ金木犀の香りなども、記憶の中に多くの人が持っている香りのひとつです。その香りにまつわる忘れられないドラマチックなことがある訳ではなくても、この香りはずっと昔に感じたことがある…そんな記憶は誰もが持っているもので、香りと記憶というのは密接な関係にあることがわかります。そしてそんな香りにまつわる記憶は恋愛感情ともとても深く関わっているものでもあります。

 

人を好きになるということ
誰かを好きになるということはとてもステキなことです。映像や写真でしか見たことのない人に夢中になることもあるし、いつも一緒に過ごしてきた人がある日突然特別な感情を抱く対象になってしまうこともあります。そしていわゆる一目ぼれといわれるように、会った瞬間にその人を好きになってしまうという経験も多くの人が持っているものです。外見を一目見てとりこになってしまうこともあるし、見た目の印象と内面に触れたときのギャップがたまらなく魅力的に感じるということもあります。そして一瞬でその人の魅力のとりこになってしまう条件の一つに、香りというのもとても大きな影響があります。清潔感を感じさせる透明感のある女性を一目で好きになったとして、その人とすれ違った時にふわりと感じた香りがさらにその人を忘れられない人とさせてしまうこともよくあることです。それはよく言うせっけんの香りのする人というたとえのように、その人のイメージにとてもあったものであればなおさらです。

 

その時に息をするのもためらうくらいに強い香水の香りがしたとすれば、もしかしたら一目ぼれの感覚が一気に冷めてしまうこともあるかもしれません。そんな風に人が人を好きになってしまう瞬間に香りはとても大切な役割を果たすもので、だからこそ香りを大切に楽しむという習慣は大人のたしなみとして長く伝えられてきた歴史があるのかもしれません。

 

コーヒーの香りの持つ魅力
疲れた時や心を落ち着かせたい時に、一杯のコーヒーを飲むことほどやすらぎを得られることはないという人は少なくありません。それくらいコーヒーと香りというのは切っても切れない関係で、コーヒーの魅力を語る時に香りという要素は欠かすことの出来ないものです。炒りたてのコーヒー豆を使って豆をひく瞬間から香りの楽しみの序章が始まり、引き立ての豆にお湯を注ぐ瞬間に立ち上る香りは、毎朝寝ぼけた頭を覚醒させるための儀式だという人もいる事でしょう。毎朝コーヒーを飲むことが習慣になっているという人は、コーヒーほどヒトの五感を刺激してくれる魅力的な楽しみを与えてくれる飲み物はないということを知っているからでしょう。

 

美容と健康にもさまざまな効果が得られることがわかって、コーヒーはさらにファンを増やしているようです。ストレスがあふれる現代人の生活の中では、ストレスが積もり積もってうつ病や自律神経失調症などの病を起こす人が少なくないといわれています。日常生活のなかでうけるちいさなストレスも積み重なってゆくことで身体にも心にも重篤な影響を与えるのですが、ストレスを全く受けない生活がいいのかといえば消してそうではないのだそうです。ストレスは生きていくうえで欠かせないエッセンスと捉え、大切なのは溜め込まずに上手に取り除くという技術です。翌日にストレスを持ち越さないような方法を見つければ、ストレスに囲まれた生活をしていてもちゃんと健康に生きていくことは出来ます。

 

ストレスを上手く取り除くためには、一瞬ほかの事に夢中になるということが大切で、その方法は人によって違って当然です。でも、例えば仕事が行き詰って気持ちがいっぱいいっぱいのとき、ちょっと席を立って自分でコーヒーを入れてみるというのは実に上手なストレスの解消法です。自分のためにコーヒーを入れるという作業をしながらコーヒーの香りが脳をほどよく刺激してくれるので、香りの効果でリラックスできるすることが出来ます。

 

コーヒーの香りそのものにリラックス効果があるし、コーヒーを飲むということが休息になるし、美味しいコーヒーを自分自身で淹れるという行為が一瞬ほかの事に夢中になることそのものだからです。ストレスを感じることはあって当たり前で、その原因を完全に取り除くことは出来ません。だからこそストレスを上手に逃すための方法を自分なりにいくつか持っておくことが大切なのだと言えます。そしてそんなストレスを逃し自分自身を癒すための方法のひとつにコーヒーを飲むことはとても効果的でおすすめです。

 

ヒトを好きになる瞬間というのは突然現れるものです。それは将来自分が結婚して幸せになるための結婚相手を探すときの感覚とは少しだけ違うかもしれません。出会ったヒトを好きになってしまうのは、その人がどんな仕事をしていてどれくらい年収があってといったことはとりあえず関係ないです。出会ったヒトが結婚している人でも、であった瞬間に好きになってしまう気持ち自体はとめることが出来ません。それでも人間は理性を持つ生き物なので、どんな背景持つヒトでも好きになったら自分の感情のままに突き進んでよいわけではなく、そこに理性が働くからこそ人間なのかもしれません。でも、どうしても抑えきれない感情に突き動かされてしまう瞬間というのも、人間だからこそ起こることなのだとも言えます。どんな代償を払ってもその気持ちに忠実に行動することでしかえられない幸せというのもあるのかもしれません。
大好きなヒトと過ごす時間はかけがえのないものです。誰にでも好きな人と過ごした大切な時間の記憶はあることでしょう。その人と過ごした時間を思い出す時に香りと共にさまざまな記憶がよみがえるというのは、人間の記憶と香りの深い関係によって起こるものです。大好きな人がいつも使っていたオードトワレの香りは、たとえもうずっと昔の記憶だとしても、街中でふとすれ違った人から同じ香りがした瞬間にあっという間に長い年月を経た記憶が鮮明によみがえることはあります。それが今となってはちょっと辛い記憶でも、今でも胸の中に何かがふわりと膨らむよな甘い記憶でも、一瞬にして閉じ込められていた記憶が息を吹き返したように鮮明に浮かび上がることがあります。

 

自分以外のヒトの心にこれほど深い記憶を刻むことができることは、ヒトとして生まれたことの最大の慶びでもあるかもしれません。そしてそんな記憶を呼び起こすきっかけとなる香りにコーヒーの香りを思い浮かべることがあります。大切なヒトと過ごした場所や、そこに流れていた穏やかな時間と共に呼び起こされる香りは、どんなに時間を経ていてもふしぎなことに色あせることなく記憶にとどめられているものです。でも、入れたてのコーヒーの香りによって呼び覚まされる記憶は、学生時代の学校の近くのカフェで一緒に何時間も語り合った記憶だったり、大好きな人とはじめて過ごした日の朝の記憶だったり、二人で過ごした穏やかな食後のひと時だったりします。どんな瞬間でもコーヒーの香りで思い出す記憶は多くの場合こんな風に幸せな瞬間です。大好きだった人が好んで飲んでいた種類の豆を買って帰るときのワクワクとした気持ち、家に帰って豆を挽き、お湯を注いだ瞬間に立ち上る懐かしい香りを楽しみながら、淹れたてのコーヒーを味わうとき、脳裏に浮かぶのは大好きな人との楽しかった記憶でしかありません。コーヒーの香りと一緒に辛い思い出がよみがえるというのは中々経験することがないのは、コーヒーがくつろいで満ち足りた瞬間を運んでくれる飲み物だからなのだと思います。

 

コーヒーは苦いから好きではないという人は勿論います。人の嗜好はそれぞれなので誰もがコーヒーの香りや味に深い癒しを感じられるわけではないのは当然のことです。世の中さまざまな香りを楽しめる飲み物があります。繊細な香りを楽しめる日本茶、伝統的な香りを大切にする紅茶、美しい色合いやさまざまな方向が楽しめるハーブティーなど、他にも香りを楽しめる飲み物はたくさんあります。こうした香りと共にくつろいだ時間を過ごすことは勿論ステキなことでその人なりの楽しみ方です。けれど、コーヒーという独特の香りを持つ飲み物が与えてくれる時間はやはり特別なもので、どこか大人びた背伸びをした記憶を持つ人もいます。そんな特別なコーヒーの香りと共に愛する人の記憶を刻むことができるのは、やはり何にも替えがたい魅力があります。

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