コーヒー好きと付き合った結果

珈琲きゃろっと(コーヒー通販)
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コーヒー。子供の頃は「大人が飲むものだから」と、飲ませてはもらえなかった。温めた牛乳の中にインスタントコーヒーの顆粒を少しだけ入れ、カフェオレを始めて飲んだとき、少しだけ大人になった気がしていた。

 

中学に入るとお小遣いを使い、パックに入ったコーヒー牛乳を購入し、友達と他愛も無い話で盛り上がりながら飲んでいた。
高校に入ってもそれは変わらず、缶に入ったカフェオレを飲みながら青い青春時代を過ごした。

 

やがて大人になり、タバコという嗜好品を覚え、喫茶店でカフェオレを注文し、タバコの煙の向こうに彼氏の姿を見ては、詰まらない会話をしていた。
この頃はまだコーヒーを美味しいと感じることはなく、あくまで喉を潤したり、喫茶店などの席の利用料として注文するものだという認識しかなかった。

 

社会人になり仕事を始めると、眠気をとったり、気持ちをリフレッシュするために一日に何本も缶コーヒーや、コーヒーショップでテイクアウトの品を購入していた。
たまに値段設定が少々高い喫茶店に入ると、ブルーマウンテンやモカなどの銘柄がメニューに書かれていた。

 
高いけどきっと美味しいのだろうな、と思いながら注文し、口に含んでみたがさほど美味しいと感じることは出来なかった。
別の銘柄を飲んでいた彼氏のコーヒーを一口もらってみたけど、違いがあまり分らなかった。
「二つのコーヒーの違いって分る?」と問うてみたが「さぁ?何となくかな?」と返された。

 

何人かと恋愛はしたが、その中で特にコーヒー好きの男性が居たわけでなかったので、私のコーヒーの知識や好みはあまり優れてはいなかった。

 

そんな時、始めてコーヒー好きと付き合うようになった。
「コーヒーがすきなんだ」と言ってその彼氏は自家焙煎の店でコーヒーを購入し、自宅にあったコーヒーメーカーで丁寧に淹れてくれた。
正直美味しいと感じた、でもそれは本当にコーヒーが美味しかったわけでなく、彼氏が心を籠めて淹れてくれたから美味しいのだと感じたのだ。

 

仕事終わりに晩御飯を一緒に食べたり、週末色々な場所に出かけた際は必ず喫茶店に入り、その店おススメのコーヒーを注文した。
カフェオレが大好きで、ブラックでコーヒーを飲めなかった私にとって、各店の出すコーヒーの違いはあまり分らなかった。

 
それでも彼氏が嬉しそうにコーヒーを飲む姿が好きだったので、喫茶店巡りは破局するまでずっと続いた。
別れる際、彼氏の部屋に置いていた私専用のマグカップは、捨てるのも勿体無いからと、ペンたてへと用途を変えてその場に置いていくことにした。

 

次に付き合った彼氏は、かなりのコーヒー好きだった。
「お気に入りのカフェがあるんだ」といって1軒のカフェに連れて行ってくれた。
そこはブレンドが置いておらず、メニューーには『●●農園』と色々な農園名が書かれていた。
「お好みのお味は?」とイケメンのマスターに問われ「苦くないのが好きです」と答えた。
コーヒーは苦いもの、と思っていたので、自分が言った答えはマスターに対して失礼ではなかったかとすぐに反省した。
彼氏に小声で「苦くないのが好きって失礼だったかな?」と問うと、「そんなことは無いよ」と返してくれた。

 

「お待たせしました」とマスターが手際よく出してくれたコーヒーは、綺麗なカップの中で琥珀色の光を宿していた。
苦くないコーヒーだから大丈夫なはず、と産まれて初めてブラックで飲んでみた。
そのコーヒーは今までのコーヒーとは全く違って、全然苦くは無かった。
むしろ甘いと言ったほうが正しいほど、芳醇な香りと独特の甘さを兼ね備えた美味しい飲み物だった。

 

「とても美味しいですね。ブラックで飲めたのはこれがはじめてです」
とマスターに言うと、「ありがとうございます。コーヒーはね、元々フルーツなので苦くはないのですよ」
と、コーヒーについて色々話してくれた。
彼氏はそれを聞きながら「粗悪な豆を使っている店ほど深煎りにして、苦さでごまかすんだよ」と教えてくれた。

 

そしてその彼氏が旦那と呼び名を代えるころ「将来カフェを経営したい」と夢を語るようになっていた。
カフェ経営など上手く行くはずがない、と私の両親は反対したが、仕事が終わった後に勉強の為にとカフェでアルバイトをする彼氏の夢を叶えてあげたくなっていた。
二人の貯金を合わせ、融資を受けて、小さなカフェを経営するようになった。
商売は楽ではない、それを実感するように最初の一年は苦しい経営となっていた。
けど、2年目の春を迎えたころ、段々とお客さまが付き始め、カフェは軌道に乗って来た。

 

当たり前だがそのカフェのウリは「本当に美味しいコーヒー」
質のいい豆だけを厳選し、優れた技術で焙煎してくれる業者と取引していたので、その界隈では敵がいないほど美味しいコーヒーを提供するカフェになっていた。
旦那は多弁でない、初めて美味しいと感じさせてくれたコーヒーを出してくれたマスターのようにイケメンでもない。
しかし、コーヒーに対する情熱と愛情だけは誰にも負けてはいない。

 

ある日友人がカフェにきて「今の彼氏がコーヒーが飲めないのでコーヒーショップに一緒に行けないのが寂しい」と愚痴っていた。
「コーヒーは苦い飲み物ではないのですよ」
珍しく旦那が友達に話しかけ、コーヒーについて語っていた。
旦那が別の接客をする為に席を外すと「旦那さんがあんなにしゃべると思ってなかった」と苦笑いされた。
「でも本当にコーヒーは苦くないから、一度彼氏を連れてきてよ」とお願いしてみた。

 

しばらくして友達が彼氏と一緒にカフェに来店してくれた。
一番甘さを感じられるコーヒーを丁寧に淹れてお出しすると、その彼氏はミルクを入れずにブラックで飲み始めた。
「無理しなくていいですよ。ミルクを入れて自分のお好みに合わせてお飲みください」というと
「いや、彼女が本当に美味しいコーヒーを飲ませてあげる」ととびきりの笑顔でいうから、ブラックで飲んでみようと思ったのです。
と、その彼氏は恥ずかしそうに語った。

 

「コーヒー好きの彼女と付き合うと、コーヒーを飲む回数が増えますよ」と問うと
「彼女の好きな物を好きになろうと思っています、あ、ですが、ここのコーヒーは本当に美味しいです」と言ってくれた。
その後友達の彼氏はコーヒーが好きになり、旦那と呼び名を代えた今ではミルまで購入して毎朝コーヒーを淹れてくれていると報告を貰った。

 

コーヒー好きと付き合った結果、私も友達の旦那もコーヒーの魅力に取り付かれてしまったようだ。

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