コーヒーは大好きな人と

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皆さんにとって、コーヒーはどんな存在ですか?

 

ただ純粋にコーヒーが好き、ストレス解消、ほっと一息つくときに欠かせないもの、またはかっこつけるためのもの・・・
人それぞれだと思いますが、私にとってコーヒーは、当時お付き合いしていた彼とデートするときに欠かせないものでした。

 

これは、私がまだ20歳頃の時の話です。当時、お付き合いしていた彼は4つ年上の社会人でした。私は、高校卒業後に経済的な理由から大学進学を断念して短大の通信教育学部に在籍していました。週のうち6日は朝から晩までアルバイトをして学費を稼ぎ、夜はレポートを書いたりして自分なりに勉強を頑張っていました。

 
そんなアルバイトと勉強にと忙しい生活を送っていたので、彼とは毎週末の一回しか会うことができませんでした。また、学費を自分で払っていたのであまりお金を使うことができなかったので、デートはもっぱら彼の一人暮らしをしているアパートでした。

 
彼は「デート代くらい出すよ」と言ってくれていたのですが、嫌だったんですね、私が。いくら相手が社会人とはいえ、毎回毎回出してもらうわけにもいかないと思っていました。
それで、コーヒーが大好きな私の為に高いコーヒーメーカーを買ってくれて、彼の家で丁寧にいれたコーヒーを2人で楽しむようになりました。

 
今思うと毎週毎週、よくそれで満足していたなと思うのですが、当時はそれだけで幸せでした。大好きな人と大好きなコーヒーを飲めたのですから。
時には、豆を求めて街に繰り出したりしていましたね。

そんな関係が2年ほど続いたときのことでした。
今から8年前に、22歳でその時の彼との間に赤ちゃんができて結婚することになったのです。今でいう出来ちゃった結婚というやつですね。

 
その当時に私はまだ短大に在籍中でしたが、大好きな彼とずっと一緒にいられるからと迷うことなく結婚にふみきりました。せっかく授かった命を殺すこともできませんでしたね。お互いに若かったですし、お金もないなかで頑張って子どもを育ててきました。

 
今思うと、子どもが子どもを育てているような、それくらい夫婦して幼かったと思います。それまで、自由奔放に生きてきた私にとって180度生活が変わるのですから育児に対するストレスも半端じゃありませんでした。

 
仲のよい友人はまだ学生の子が多かったですし、赤ちゃんを連れて遊びに行っても早い時間には自分だけ帰ることになるので、次第に連絡も取らなくなり自宅に引きこもるようになりました。

 
そして、自分だけが独りなんだ、自分だけが取り残されているんだと、どんどん気持ちが落ち込んでいきました。

そうすると、夫に対する態度も変わっていきました。仕事で疲れて帰ってきた夫に育児のストレスをぶちまけて暴言を吐いたり、冷たくしたり今思うと本当に子どもだったし、反省しかありません。
そんな私に対して夫は、叱りも怒りもせず優しく接してくれていました。その優しさでさえ私にとってはイライラする原因になっていたのです。なんで、私だけこんな大変な思いをしてあなたは平常心でいられるのかと。あなたはなにも生活スタイルが変わっていないじゃないのと。

 

それまで、大好きで一杯を味わいように飲んでいた私が、味なんて関係なしにがぶがぶと一日に5.6杯もコーヒーを飲むようになりました。
授乳をしていたのでお酒は飲めなかったのでコーヒーならいいやと。カフェインを大量に摂取することに対しても何も考えもせずに。

 
また、時間をかけられないのでインスタントコーヒーを大量に購入してきて、それを飲んでいました。とにかく、ストレス解消したかったんですね。
ほかになかったんです、発散する方法が。また、ほかのことで楽しもうとか解消しようとか、そうゆうことすら考えることもできなくなっていたんだと思います。

 

今考えると、鬱状態だったのかもしれませんが、当時はコーヒーを飲むことで安心感を得られていました。
辛かった子どもの乳幼児期が過ぎて、だんだんと子どもがいる生活にも慣れてきて精神的にも安定してきたのが娘が1歳の誕生日を迎えた頃でした。
その頃には、コーヒーの量は2・3杯に減ってきてはいましたがやはりインスタントコーヒーを飲んでいました。コーヒーメーカーを使おうなんて思いませんでしたね。

 

娘の誕生日のお祝いをすることになり、ごはんとケーキで自宅でお祝いをして、夜寝かしつけてやっと一息つけるかなという時でした。
夫がキッチンの棚の奥にずっとしまってあったコーヒーメーカーを出してきました。そして、「一緒に飲もう。」と。忙しい仕事の合間をぬって、私の大好きな豆とケーキも買ってきてくれていました。

とても久しぶりでした、夫と2人でゆっくりとコーヒーをいれて味わうのは。育児でストレスを溜めこんで辛くあたってきた私を見捨てずに、優しい気持ちでずっといてくれた夫に対して、申しわけない気持ちとありがとうの気持ちが一気に溢れてきて、涙が止まりませんでした。

 
そんな私に対して夫は、「初めての出産と育児で生活が180度変わってすごい大変だったよね。ママになって1年間本当にありがとう。これからは、また2人でこうやってゆっくりとコーヒー飲もうね。」と。

 

私はその時に気付いたのです。あんなに大好きだったコーヒーがいつの間にかストレス解消のための道具でしかなくなっていってたんだと。
なんでそうなってしまったのだろうと。でも、それに気づくことが出来て良かったと強く思いました。

 

あの時1歳だった娘は小学生になりました。あんなに大変だった育児も過ぎてしまえばあっという間なものです。
娘の下に2人の息子もできてまだまだ育児に奮闘中ですが、あの当時赤ちゃんだった娘が「ママ、疲れているのでしょ?」と、コーヒーを入れてくれることがあり、頑張って育ててきて良かったとつくづく思います。

 

お付き合いしていた時に夫が買ってくれたコーヒーメーカーは、いまだに現役で使っています。修理しながら使っているので、もうボロボロですが私たち夫婦にとってはとても大切な宝物です。
そして、子どもたちを寝かしつけてから2人でコーヒーを飲むのが毎晩の日課になっています。

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